「美容室 リピート率 平均」で検索して、いくつかの数字を見たあと、自店がその数字より上なのか下なのか分からないという状態になっていないでしょうか。
理由は明確です。リピート率には統一された定義がなく、業界平均も公表されていません。計算式が違えば数字も違うので、他店の数字と並べても比較になりません。
この記事では、平均値を探す代わりに、公表されている実データと、自店の数字を定義から決めて出す手順を書きます。
この記事でわかること
- リピート率の業界平均が公表されていない理由と、代わりに使える公表データ
- リピート率の3つの定義と、どれを使うべきか
- 観測期間を決めないと数字が動く理由
- 自店の数字を出す計算手順(表計算でもできます)
- 上げるための打ち手を、効く順に
まず、公表されている数字を確認する
リピート率そのものの平均は公表されていませんが、来店の頻度は調査データとして公表されています。
株式会社リクルート ホットペッパービューティーアカデミーの「美容センサス2026年上期【美容室編】」(2026年6月25日公表)は、次の数字を挙げています。
| 項目 | 女性 | 男性 |
|---|---|---|
| 美容室の利用率 | 77.5%(前年差 −1.7ポイント) | 32.7%(前年差 −1.8ポイント) |
| 年間利用回数 | 4.18回 | 5.05回 |
| 1回あたり利用金額 | 7,686円(前年比 +0.2%) | 4,853円(前年比 −0.5%) |
出典: 株式会社リクルート ホットペッパービューティーアカデミー「【美容室編】美容センサス2026年上期」(2026-08-06取得)
同調査は、年間利用回数が男女ともに減少し「幅広い年代で年間利用回数の減少が見られており、来店サイクルの長期化が進んでいる様子がうかがえます」としています。一方で1回あたりの利用金額はほぼ横ばいです。
研究員のコメントも引用しておきます。
物価高や生活コストの上昇が続く中で、お客さまは美容室に対して「利用をやめる」のではなく、「来店間隔を空ける」ことで支出を調整している様子がうかがえます。
出典: 同上(2026-08-06取得)
この数字の使い方
「年間4.18回」は業界の平均であって、自店の目標値ではありません。カット中心の店とカラー・パーマ中心の店では、来店サイクルがそもそも違います。
使い道は次の2つです。
- 自店の顧客1人あたり年間来店回数と比べる — 大きく下回るなら、間隔が空いている理由を探す材料になる
- 来店サイクルが長期化しているという前提を持つ — 去年と同じ運用で回数が落ちているなら、それは自店だけの問題ではない可能性がある
リピート率の定義は3通りある
ここが「平均が公表されていない」理由の中心です。同じ「リピート率」という言葉で、違うものを指しています。
定義A: 新規リピート率(新規客の2回目転換率)
新規リピート率 = 期間内の新規客のうち、観測期間内に2回目が来た人数 ÷ 期間内の新規客数
初回で終わったか、2回目が来たかを見る指標です。
定義B: 全体リピート率(来店客に占めるリピーターの比率)
全体リピート率 = 期間内の来店客のうちリピーターの人数 ÷ 期間内の来店客数
注意が必要です。この定義は新規獲得を増やすと下がります。広告を止めて新規が減れば、分母が減って数字は上がります。改善の判断には単独で使えません。
定義C: 既存客維持率
既存客維持率 = 前期も今期も来た人数 ÷ 前期に来た人数
離反を見る指標です。期間の区切り方(半年・1年)で数字が変わります。
どれを追うべきか
定義A(新規リピート率)です。理由は2つあります。
- 改善の余地が大きい — 初回で終わる人を減らすほうが、すでに定着している人の頻度を上げるより動かせる幅があります
- 原因を特定しやすい — 初回の体験(カウンセリング・仕上がり・次回案内)に絞って検証できます
定義Bは経営の状態を眺めるには使えますが、施策の効果測定には向きません。新規を増やすほど下がるからです。
観測期間を決めないと数字が動く
定義Aを使う場合、「いつまでに2回目が来たら成功とするか」という観測期間を決める必要があります。
同じ顧客群でも、観測期間が違えば数字は変わります。
| 観測期間 | 何を見ているか |
|---|---|
| 45日 | 短いサイクルの層だけを拾う。厳しめの指標 |
| 90日 | カット中心なら1周期+α。実務で扱いやすい |
| 180日 | カラー・パーマ中心の店でも拾える。ただし判断が遅くなる |
観測期間は短いほど改善の反応が早く分かり、長いほど数字は高く出ます。
重要なのは、一度決めたら変えないことです。期間を変えながら比べると、施策の効果と定義の変更が混ざって判断できなくなります。
推奨は90日です。カット中心の店なら1周期が終わっており、施策を打ってから3か月で結果が見えます。カラー・パーマ中心なら120日でも構いません。自店の主力メニューの来店サイクルより少し長く取ってください。
自店の数字を出す手順
表計算でもできます。必要なのは来店履歴だけです(1来店1行の形式にしておきます)。
ステップ1: 対象月の新規客を抽出する
「初回来店日がその月に含まれる顧客」を抜き出します。顧客マスタに初回来店日の列があれば一発です。無ければ、来店履歴を顧客IDごとに集計して最小の来店日を取ります。
ステップ2: 各人の2回目来店日を出す
来店履歴から、その顧客の2番目に古い来店日を取ります。
ステップ3: 観測期間内かどうかを判定する
2回目来店日 − 初回来店日 ≦ 90日 → 成功
2回目が無い、または 90日超 → 未達
ステップ4: 割合を出す
新規リピート率 = 成功した人数 ÷ その月の新規客数
計算例
4月の新規客が20名、うち7月12日までに2回目が来たのが8名だった場合。
8 ÷ 20 = 40%
この40%という数字に、他店との比較の意味はありません。意味があるのは、翌月・翌々月の同じ計算式で出した数字との比較です。
集計を止めないための注意
- 毎月同じ形式で残す — 3か月で傾向が見え、6か月で季節変動と切り分けられます
- 担当者別にも出す — 全体では見えない差が出ます。ただし新規の配分が偏っていると比較になりません
- メニュー別にも出す — カット単品とカラーで来店サイクルが違うため、混ぜると平均が意味を失います
上げるための打ち手
効く順に並べます。上から順に、実行コストが低く効果が確実です。
1. 会計時にその場で次回予約を取る
これが最も直接的です。次に来る日が決まっていない状態で店を出ると、次回の予約は「思い出したとき」になります。前掲の調査が示す「来店間隔を空けることで支出を調整する」という動きに対しては、先に日付を押さえておくことが対抗策になります。
日付が決まらない場合でも、その場で予約ページをブックマークしてもらうところまでやってください。会計時に口頭で伝えてQRコードを読み取ってもらうと、実際にブックマークまで到達します。カードを渡して終わりにすると、そこで止まります。
2. 来店サイクルに合わせてリマインドを送る
前回の施術日から一定日数が経った顧客に案内を送ります。送る相手を選ぶには抽出ができる必要があります。
送るタイミングは、自店の主力メニューのサイクルの少し手前です。カットが6週間サイクルなら5週目。伸びきってから送ると、他店で済ませたあとになります。
3. 初回で終わった人の理由を特定する
定義Aの数字が低いなら、初回の体験のどこかに原因があります。確認する順序は次のとおりです。
- カウンセリングで要望を聞き切れているか
- 仕上がりの説明と、自宅での再現方法を伝えているか
- 次回の目安時期を伝えているか — 「次は◯週間後くらいが目安です」と言うかどうかで、次回予約の会話が成立するかが変わります
- 初回割引に依存していないか — 割引で来た人が2回目に定価で来るかは別の話です
4. 離脱しかけている人に声をかける
「前回から◯日経過して、次回予約が入っていない顧客」を抽出して案内します。完全に離れる前に接点を持つのが目的です。
抽出条件の例です。
- 前回来店から90日以上経過し、未来の予約が無い
- 過去3回以上来店していた(=定着していたのに止まった人)
2つ目の条件を入れると、元々1回で終わった人が混ざりません。声をかける相手が絞れます。
5. 施術記録を次回に活かす
前回の薬剤・仕上がり・要望・雑談の内容が残っていれば、2回目の体験が変わります。「前回のカラー、色落ちはどうでしたか」と言えるかどうかの差です。
記録すべき最小限の項目は次のとおりです。
- 施術メニューと使用した薬剤
- 仕上がりに対する反応
- 次回の提案(伝えた目安時期を含む)
- 会話の内容で次回に繋がるもの
メニュー別・スタッフ別に分解するときの注意
全体の数字だけを見ていると、改善すべき場所が特定できません。ただし分解には落とし穴があります。
メニュー別: サイクルが違うものを同じ観測期間で測らない
| 主力メニュー | 来店サイクルの目安 | 90日で測ると |
|---|---|---|
| カット中心 | 4〜8週間 | 1〜2周期。測れる |
| カラー中心 | 6〜10週間 | 1周期前後。測れる |
| パーマ中心 | 8〜16週間 | 1周期に届かないことがある |
| 縮毛矯正・トリートメント中心 | 12〜24週間 | 測れない |
サイクルが観測期間より長いメニューは、90日では「未達」に見えます。低い数字が出たときに施策の問題なのかサイクルの問題なのかを切り分けられません。
対処は2つです。
- メニュー群ごとに別々の観測期間を設定する(カット90日/縮毛矯正180日など)
- 観測期間は90日で固定し、メニュー群ごとに数字を分けて見る — 絶対値ではなく前月比で判断する
2のほうが運用は簡単です。縮毛矯正の90日リピート率が15%でも、それが先月の12%から上がっていれば改善しています。
スタッフ別: 新規の配分が偏っていると比較にならない
指名なしの新規を特定のスタッフに寄せている場合、その人の数字だけ構造的に不利になります(初回で終わる層を多く受けているため)。
比較するなら、同じ条件どうしで見てください。
- 指名なし新規のリピート率どうし
- 指名ありの再来率どうし
混ぜた数字でスタッフを評価すると、配分の偏りを個人の成績として読んでしまいます。
期間別: 母数が小さいと数字が跳ねる
月の新規が10名なら、1人の増減で10ポイント動きます。新規が月20名を下回るなら、月次ではなく3か月移動平均で見てください。単月の上下に反応して施策を変えると、何が効いたのか分からなくなります。
リピート率が売上にどう効くか
改善の優先順位を決めるために、金額に換算します。
試算の式
年間売上 = 新規客数 × 平均来店回数 × 客単価
新規リピート率が上がると、平均来店回数が上がります。
具体例
月の新規が20名、客単価8,000円、現在の新規リピート率が40%、リピートした人はその後さらに平均2回来ると仮定します。
現状:
1人あたり平均来店回数 = 1 + 0.40 × 3 = 2.2回
新規20名からの年間売上 = 20 × 12 × 2.2 × 8,000円 = 4,224,000円
新規リピート率を40% → 50%(+10ポイント)にした場合:
1人あたり平均来店回数 = 1 + 0.50 × 3 = 2.5回
年間売上 = 20 × 12 × 2.5 × 8,000円 = 4,800,000円
差は576,000円。新規を増やさずに、初回で終わる人を10ポイント減らすだけで得られます。
同じ金額を新規獲得で作ろうとすると、月あたり2.7名の新規を追加で連れてくる必要があります。広告費がかかる分、こちらのほうが高くつきます。
この試算をご自身の数字で一度やってみてください。「リピート率を上げよう」という掛け声より、金額で見たほうが優先順位が決まります。
なお、この計算に使った「リピートした人はその後さらに平均2回来る」という部分は自店の実績で置き換えてください。ここが分からない場合は、新規客のその後の来店回数を先に集計します。
利用率が下がっている前提で考える
前掲の美容センサス2026年上期は、利用率そのものの低下も示していました(女性77.5%で前年差 −1.7ポイント、男性32.7%で −1.8ポイント)。同調査は「市場規模減少の背景には利用者数そのものの減少があると考えられます」としています(出典: 同上、2026-08-06取得)。
これが意味するのは、新規のパイが縮んでいるということです。
- 新規獲得の競争は厳しくなる(=獲得コストが上がりやすい)
- すでに来ている人を維持する価値が相対的に上がる
新規を追う施策とリピートを守る施策のどちらを優先するかという問いに対して、この数字は後者に傾く材料になります。ただし新規がゼロでは母数が減り続けるので、両方を止めないことが前提です。
数字を良く見せる操作をしない
指標を運用し始めると、数字を上げる誘惑が出てきます。次の4つは避けてください。いずれも数字は上がりますが、経営は改善しません。
- 定義を途中で変える — 観測期間を90日から180日に延ばせば数字は上がります。改善したのは定義であって店ではありません
- 母集団から都合の悪い層を外す — 「クーポン利用の新規は除く」といった除外を後から足すと、前月と比較できなくなります
- 初回割引を厚くして2回目も割引で呼ぶ — 2回目は来ますが、定価で来る顧客にはなりません。割引なしの3回目で判定してください
- 予約が入っただけでリピートに数える — 来店ベースで数えてください。無断キャンセルが混ざります
1と2は、記録の形式を固定しておけば防げます。毎月同じ計算式・同じ母集団の定義で出し、その定義をファイルの先頭に書いておいてください。
仕組みの前提: 抽出できる状態にする
打ち手の2・4は、いずれも、「◯日経過した顧客」を抽出できることが前提です。
抽出には、予約(来店の記録)と顧客が同じ場所にある必要があります。予約を紙の台帳やポータルの管理画面、顧客情報を別のファイルで持っていると、突き合わせる元データが揃いません。
表計算でも設計次第で可能です(顧客マスタと来店履歴を顧客IDで紐づける形)。ただし予約を別で管理している場合、来店のたびに2箇所へ書くことになり、忙しい日にどちらかが抜けます。この構造上の制約は運用の努力では埋まりません。
顧客管理の選択肢と、それぞれの限界は美容室の顧客管理を無料でやる方法に、予約システムの比較は美容室の予約システム比較にまとめています。
記録フォーマット
集計が続かない原因は、毎月どこかが変わることです。次の形式で固定してください。表計算1枚で足ります。
シート1: 定義(最初に書いて、以後変えない)
| 項目 | 決めた内容の例 |
|---|---|
| 指標 | 新規リピート率(定義A) |
| 観測期間 | 90日 |
| 母集団 | その月に初回来店した顧客。スタッフの家族・関係者は除く |
| 判定 | 来店ベース(予約が入っただけでは数えない) |
| 除外 | なし |
「除外」を空欄でも書いておくことに意味があります。後から除外を足したくなったとき、変更した事実が残ります。
シート2: 月次の記録
| 対象月 | 新規客数 | 90日以内に2回目 | 新規リピート率 | 3か月移動平均 | メモ |
|---|---|---|---|---|---|
| 2026-04 | 20 | 8 | 40.0% | — | |
| 2026-05 | 18 | 8 | 44.4% | — | 次回予約の声かけを開始 |
| 2026-06 | 22 | 11 | 50.0% | 44.8% |
メモ欄に施策を書くのが要点です。数字が動いたとき、何をした月かが分からないと因果を追えません。
判定できるようになるまでの時間
観測期間が90日なので、4月の新規について判定できるのは7月です。施策を4月に始めても、結果が見えるのは3か月後になります。
このタイムラグを見込まずに「1か月やって変わらないからやめる」と判断すると、効いていた施策を捨てることになります。最低でも観測期間+2か月は続けてから判断してください。
リピート率と広告費の関係
リピート率は、広告費の判断にも直結します。
新規1人あたりの獲得コスト(CPA)を初回の粗利で回収できない場合、回収できるかどうかはリピート回数で決まります。
回収に必要な来店回数 = CPA ÷ 1回あたりの粗利
CPAが12,000円、1回あたり粗利が4,000円なら3回。実際に新規客が平均何回来ているかを測って、3回に届いているかを見ます。届いていなければ、その広告費は回収できていません。
この判定をするには、リピート率ではなく「新規客の平均来店回数」が要ります。リピート率(2回目が来たかどうか)とは別の指標なので、両方を出しておくと広告費の判断まで繋がります。
掲載費が自店にとって見合っているかの計算手順はホットペッパービューティーの掲載料はいくらかに、年間の差額の試算は損益分岐シミュレーターにまとめています。
まとめ
- リピート率の業界平均は公表されていない。定義が統一されていないため
- 代わりに使えるのは年間利用回数。美容センサス2026年上期では女性4.18回・男性5.05回(ともに前年から減少)
- 同調査は「来店サイクルの長期化」を指摘。利用をやめるのではなく間隔を空けるという動き
- リピート率の定義は3通り。追うべきは新規リピート率(定義A)。全体リピート率は新規を増やすと下がるので施策評価に使えない
- 観測期間を先に決める(推奨90日)。一度決めたら変えない
- 打ち手は、会計時の次回予約 → サイクルに合わせたリマインド → 初回離脱の原因特定 → 離脱前の声かけ → 施術記録の活用の順
- 2と4は「◯日経過した顧客」を抽出できることが前提
自店の数字を出すところから始めてください。他店の平均値は、出す必要のない数字です。