ヘアサロン

美容室の顧客管理を無料でやる方法。エクセル・無料アプリ・予約システムを、法律上の義務まで含めて比較する

公開日: 2026-08-05

「美容室 顧客管理 無料」で検索する人が知りたいのは、無料のソフト名の一覧ではないはずです。知りたいのは、無料でどこまでできて、どこから困るのかだと思います。

この記事は、無料でできる4つの方法を、それぞれの壊れ方まで含めて書きます。エクセル運用も、良い点と壊れる条件を両方書きます。あわせて、どの方法を選んでも避けられない法律上の義務を先に整理します。ここを外すと、ツール選びの前提が崩れるからです。

前提: 顧客名簿を持った時点で、法律上の義務が発生する

ツールを選ぶ前に、これだけは押さえてください。無料か有料かに関係なく、顧客名簿を持っているサロンには個人情報保護法の義務がかかります。

一人サロンでも対象になる

個人情報保護法第16条第2項は「個人情報取扱事業者」を「個人情報データベース等を事業の用に供している者」と定義しており、除外されるのは国の機関・地方公共団体・独立行政法人等だけです。取り扱う人数による除外規定はありませんe-Gov法令検索・個人情報の保護に関する法律、2026-08-05取得)。

同条第1項の「個人情報データベース等」は、「特定の個人情報を電子計算機を用いて検索することができるように体系的に構成したもの」等と定義されています。顧客名簿をエクセルで作って名前で検索できる状態にしていれば、これに当たります。顧客数が20名でも同じです。

「うちは個人店だから関係ない」という切り分けは、条文上できません。

具体的に何をしなければならないか

主なものを、実務でやることに翻訳して並べます(条文はいずれも前掲・個人情報の保護に関する法律)。

条文義務の内容サロンでやること
第17条利用目的をできる限り特定する「予約管理・施術履歴の記録・次回来店のご案内のため」等を決めておく
第21条第1項取得したら利用目的を本人に通知または公表する予約フォームや店内掲示、Webサイトに書く
第21条第2項書面で直接取得する場合は、あらかじめ利用目的を明示する紙のカウンセリングシートに利用目的を印刷しておく
第22条正確・最新の内容に保ち、必要がなくなったら遅滞なく消去するよう努める古い名簿を無限にため込まない
第23条漏えい・滅失・毀損の防止に必要かつ適切な措置を講じる保管場所・アクセス権・バックアップを決める
第24条従業者を監督するスタッフの持ち出しルール、退職時のアクセス権削除
第25条委託先を監督する外部サービスに預ける場合、その事業者の取扱いを確認する
第32条事業者名・利用目的・請求手続を本人の知り得る状態に置くWebサイトに記載する
第33条本人から開示請求があれば遅滞なく開示する「私の登録情報を見せて」に応じる手順を決めておく
第34条内容が事実でないときは訂正等に応じる誤りの申し出があれば直す

第23条の「安全管理措置」が、ツール選びに直接効いてきます。どこに置くかは自由ですが、どう守るかは選べません。

漏らしたときに何が起きるか

第26条第1項は、個人の権利利益を害するおそれが大きい事態が生じたときの個人情報保護委員会への報告を義務付けています。その「おそれが大きい事態」は、施行規則第7条で次の4類型と定められています(e-Gov法令検索・個人情報の保護に関する法律施行規則、2026-08-05取得)。

  1. 要配慮個人情報が含まれる個人データの漏えい等
  2. 不正に利用されることにより財産的被害が生じるおそれがある個人データの漏えい等
  3. 不正の目的をもって行われたおそれがある行為による漏えい等
  4. 本人の数が千人を超える漏えい等

同規則第8条第2項により、報告は事態を知った後速やかに(速報)、さらに30日以内(第3号の類型は60日以内)に確報を出さなければなりません。第26条第2項により、本人への通知も必要です。

ここで注意したいのが3番目です。「不正の目的をもって行われたおそれがある行為」による漏えいには人数の下限がありません。サロンのパソコンがランサムウェアに感染した、共有ドライブに不正アクセスされた、といった場合は、顧客が数十名でも報告対象になりえます。手続きは個人情報保護委員会の漏えい等の対応とお役立ち資料(2026-08-05取得)にまとまっています。

また、施術内容によっては要配慮個人情報(1番目)が絡みます。アレルギーの有無、皮膚疾患、通院歴、妊娠中かどうかといった情報をカルテに書いているなら、健康に関する情報を持っていることになります。カウンセリングシートにアレルギー欄を作っているサロンは、この点を自覚しておく必要があります。

前置きが長くなりましたが、ここまでが「無料のツールを選ぶ前に決まっていること」です。ここからが本題です。

方法1: エクセル/スプレッドシート

費用ゼロで、いちばん自由が利く方法です。表計算が使えるなら今日から始められます。

列の設計(これで作れば後で困りません)

顧客マスタとして1シート、来店履歴として別シート、の2枚構成にします。1枚のシートに履歴を横に足していく作り方は、必ず破綻します。(来店するたびに列が増え、集計も検索もできなくなります。)

シート1: 顧客マスタ(1人1行)

備考
顧客IDC0001手動採番。履歴シートと突き合わせる鍵になる
氏名山田 花子
かなやまだ はなこ並べ替え・検索用
電話番号090-0000-0000書式を「文字列」にする(後述)
メールアドレス
初回来店日2026-04-12
担当
アレルギー・注意事項要配慮個人情報を含みうる欄
利用目的の明示日2026-04-12第21条第2項の記録
備考

シート2: 来店履歴(1来店1行)

顧客IDC0001
来店日2026-07-20
メニューカット+カラー
担当
金額12,000
薬剤・施術メモ

この形なら、来店回数はCOUNTIF、最終来店日はMAXIFS、売上はSUMIFSで出せます。顧客マスタ側に来店回数や最終来店日を手入力しないでください。手入力した瞬間から、実態とずれ始めます。

エクセル運用が壊れる5つのポイント

  1. 電話番号の先頭の0が消える — セルの書式を「標準」のままにしていると 09000000000 が数値と解釈されて 9000000000 になります。列全体を「文字列」に設定してから入力してください。すでに消えている場合、元の番号は復元できません
  2. 日付が文字列になる/文字列が日付になる2026-4-122026/4/124月12日 が混在すると、並べ替えも期間の計算もできなくなります。入力規則で形式を固定してください
  3. 複数人が同時に編集して上書きする — 共有フォルダのExcelファイルを2人が開くと、後から保存したほうが勝ちます。スタッフが複数いるなら、ここは実際に事故が起きる場所です
  4. コピーが増殖して原本が分からなくなる顧客管理.xlsx顧客管理_最新.xlsx顧客管理_20260701.xlsx が並ぶ状態です。こうなると、どれが正なのか誰にも分からなくなります
  5. 予約台帳と二重入力になる — 予約は別の場所(紙・アプリ・ポータル)で管理していて、顧客情報だけエクセル、という状態だと、来店のたびに2箇所に書くことになります。忙しい日はどちらかが抜けます

安全管理措置としてやること

第23条を満たすために、最低限これだけはやってください。

  • ファイルにパスワードを設定する(Excelの「パスワードを使用して暗号化」)
  • 保存場所を1箇所に決める(デスクトップに散らかさない)
  • バックアップを取る(PCの故障で全部消えます。第23条の「滅失」の防止です)
  • Googleスプレッドシートを使う場合、共有設定を確認する — 「リンクを知っている全員が閲覧可」になっていると、URLが漏れた時点で誰でも見られます。「特定のユーザー」だけに限定してください
  • スタッフが辞めたら、共有から外す(第24条)

向いている規模

  • スタッフが1名
  • 顧客数がおおむね数十名まで
  • 予約管理は別で完結していて、顧客情報を記録できればよい

この条件から外れると、上の5つのうちどれかが起きます。特に3(同時編集)と5(二重入力)は、規模が大きくなるほど確実に効いてきます。

方法2: 紙のカルテ

費用は紙代だけです。書き心地の面で紙を選んでいるサロンもあります。

ただし、実務上のコストは無料ではありません。

  • 探す時間 — 来店のたびに探します。1回30秒でも、月200来店なら100分です
  • 集計できない — 「3か月来ていない人」を抽出できません。抽出できないと、次の一手が打てません
  • 紛失・災害に弱い — 第23条の「滅失」の防止という観点で、紙は複製が作りにくいという弱点があります
  • 保管場所 — 増え続けます

なお、紙であっても、五十音順など容易に検索できるように体系的に整理されていれば「個人情報データベース等」に当たりえます(第16条第1項第2号)。「紙だから法律の対象外」ではありません。

現実的には、紙のカウンセリングシートで取得して、データはデジタルに転記するという併用が扱いやすい形です。紙は同意の証跡として保管し、日々の検索・集計はデータ側でやります。

方法3: 無料の顧客管理アプリ

無料アプリを選ぶときに見るべきは、機能一覧ではなく次の5点です。

1. 上限(人数・件数)

無料枠の上限が、自店の顧客数に対して足りるか。上限に達したときにどうなるか(新規登録だけができなくなるのか、既存データも見られなくなるのか)まで確認してください。

2. データを書き出せるか

これがいちばん重要です。CSVでエクスポートできないサービスは、乗り換えるときにデータを取り出せません。手作業で写すことになり、顧客数が多いほど詰みます。契約する前に「エクスポート」の項目があるかを確認してください。

3. サービス終了・仕様変更時の扱い

無料サービスは終了することがあります。終了時にデータをどう返却するかが規約に書かれているかを見てください。書かれていないなら、自分で定期的に書き出しておく必要があります。

4. 広告表示と、その中身

無料の対価として広告が出るサービスがあります。サロンの画面にどう出るか、お客様に見える画面にも出るかを確認してください。

5. その事業者の取扱い(第25条の委託先の監督)

外部サービスに顧客データを預けることは、個人データの取扱いを委託することに当たります。個人情報保護法第25条は、委託する場合に「委託を受けた者に対する必要かつ適切な監督」を求めています。

現実に一人サロンができる「監督」は、次の程度で構いません。

  • そのサービスのプライバシーポリシー・利用規約を読む
  • 事業者の名称・所在地が明記されているか確認する
  • データの保管場所とセキュリティについての記載があるか確認する
  • 記載が一切ないサービスは選ばない

運営者が誰か分からないサービスに顧客名簿を預けない、というのが最低ラインです。

方法4: 予約システムに付属する顧客管理(無料プラン)

予約と顧客が同じ場所にある形です。

利点

二重入力が消えます。予約が入った時点で顧客レコードができ、来店すればそれが履歴になります。方法1の「壊れるポイント5」がそもそも発生しません。

さらに、予約データと顧客データが繋がっていることで、次のような抽出ができるようになります。

  • 3か月来ていない顧客
  • 新規で来て2回目に来なかった顧客
  • 特定のメニューを受けた顧客

これらは表計算でもできますが、予約を別で管理していると、そもそも突き合わせる元データが揃いません。

確認すること

無料プランの上限が、自店の実運用に耐えるかどうかです。見るべきは3つ。

  1. 月間の予約件数の上限 — 自店の月間来店数と比べる
  2. 顧客登録数の上限 — 現在の顧客数と比べる
  3. スタッフ数の上限 — 複数人いるなら足りるか

このうち一つでも足りないなら、無料プランは「試用」であって「運用」にはなりません。そこは正直に見積もったほうがいいです。

4つの方法の比較

エクセル紙カルテ無料アプリ予約システム(無料枠)
費用0円紙代0円0円
検索・抽出できる(設計次第)できないできるできる
予約との二重入力発生する発生する発生する発生しない
複数人での同時利用事故が起きるできないサービス次第できる(上限内)
データの書き出し元がファイルできない要確認要確認
バックアップ自分で取る事実上できない事業者側事業者側
上限なし保管場所次第あるある
第25条の委託先監督不要不要必要必要

「無料」という条件だけで並べると、エクセルがいちばん自由です。ただし、予約を別の場所で管理しているなら、二重入力のコストが毎日かかり続けます。ここをどう評価するかで結論が変わります。

「無料の顧客管理ソフト ランキング」の読み方

「顧客管理 ソフト 無料 ランキング」という形で候補を探す場合、ランキング記事を読むときに次の3点を確認してください。

  1. その順位が何を基準に付いているか書かれているか — 基準の記載がない順位は、記事の書き手の都合で並べ替えられます
  2. 「無料」の中身が何か — 「無料プランがある」「無料トライアルがある」「初期費用が無料」はすべて別のものです。無料トライアルは期間が終われば課金されます
  3. 掲載日と、料金の取得日が書かれているか — 料金は変わります。日付のない料金表は、いつの情報か分かりません

そして、順位そのものより先に、この記事で挙げた上限・書き出し可否・アクセス権管理の3点で候補を絞ったほうが早く決まります。この3点を満たさないサービスは、順位が何位でも自店では使えないからです。

どの方法を選んでも必ずやる4つのこと

1. 利用目的を決めて、書いて、掲示する

第17条・第21条・第32条をまとめて満たす方法です。次のような一文を、予約フォーム・カウンセリングシート・Webサイトに置いてください。

当店は、お客様の個人情報を、ご予約の管理、施術履歴の記録、次回ご来店のご案内、およびお問い合わせへの対応のために利用します。ご本人からのご請求により、登録内容の開示・訂正・削除に応じます。

第32条は事業者名・住所(法人は代表者名)も「本人の知り得る状態」に置くことを求めているので、店名・所在地・連絡先もあわせて記載します。

2. 書き出せる状態を維持する

どのツールを使っていても、年に1回はCSVで書き出して手元に保存する習慣をつけてください。サービスが終わっても、乗り換えたくなっても、これがあれば動けます。

3. バックアップを持つ

第23条の「滅失」の防止です。ファイル運用なら別の場所にコピー、クラウドサービスなら定期的なCSV書き出しがそのままバックアップになります。

4. アクセスできる人を管理する

第24条(従業者の監督)です。スタッフが増えたら追加し、辞めたらその日のうちに削除します。共有アカウントを使い回していると、この削除ができません。人ごとにアカウントを分けられるかどうかは、ツール選びの基準に入れてください。

「無料でどこまで」の実際の線引き

自社サービスの数字も出しておきます。Salon-BookyのFreeプランは、次の範囲です。

項目Freeプラン
月額0円
スタッフ数1名
月間予約件数30件
顧客登録数20名
メニュー数5件
CSVインポート/エクスポート利用可
QRコード生成利用可
リマインドメールBasicプランのみ
「Powered by」バナー強制表示

正直に書きますが、顧客登録数20名は「試す」ための枠です。実際に営業しているサロンの顧客台帳としては足りません。予約フローと画面を確かめて、自店の運用に合うかを判断していただくための枠だと考えてください。

実運用の顧客管理として使う場合は、月額2,980円のBasicプラン(予約件数・顧客数・メニュー数が無制限、スタッフ3名込み、4名目から1名あたり月額980円)が対象になります。詳細は料金プランに掲載しています。

FreeプランでもCSVのインポートとエクスポートは使えます。これは意図してそうしています。データを持ち込めない・持ち出せない状態は、前述の「2. 書き出せる状態を維持する」に反するからです。

乗り換えるときのデータ移行で気をつけること

現在エクセルで管理していて移行する場合、次の順で作業します。

  1. 移行元のデータを整える — 電話番号の先頭0が消えていないか、日付形式が揃っているかを先に直す。移行してから直すほうが手間がかかります
  2. 文字コードを確認する — CSVはUTF-8が扱いやすい形式です。Excelから普通に「CSVで保存」すると別の文字コードになり、氏名が文字化けすることがあります。移行先が想定する形式を確認してください
  3. 少数で試す — いきなり全件入れず、5件だけ入れて表示を確認します
  4. 移行後に件数を照合する — 元が312件なら、移行先も312件か。ここを確認せずに元データを消さないでください
  5. 作業用のコピーを消す — 移行が終わったら、デスクトップやダウンロードフォルダに残ったCSVを削除します(第23条)

まとめ

  • 顧客名簿を持った時点で個人情報保護法の対象になる。人数による除外はない(第16条第2項)
  • 無料で始める方法は4つ。エクセル・紙・無料アプリ・予約システムの無料枠
  • エクセルは自由度が高いが、電話番号の0落ち・同時編集・二重入力で壊れる
  • 無料アプリはCSVで書き出せるかを契約前に確認する。書き出せないと乗り換えられない
  • 外部サービスを使うことは個人データの取扱いの委託にあたる(第25条)。運営者が分からないサービスは選ばない
  • どの方法でも、利用目的の公表・書き出し・バックアップ・アクセス権管理の4つは必要
  • 千人を超える漏えいや、不正目的の行為による漏えいは個人情報保護委員会への報告義務がある(施行規則第7条)

ツールを変えるかどうかより、予約と顧客が同じ場所にあるかどうかが、日々の手間を決めます。無料枠と有料プランの線引きは料金プランに全項目を掲載しているので、自店の顧客数・予約件数と突き合わせてご判断ください。

よくある質問

一人サロンでも個人情報保護法の対象になりますか?

なります。個人情報保護法第16条第2項は「個人情報データベース等を事業の用に供している者」を個人情報取扱事業者と定義しており、取り扱う人数による除外規定はありません。顧客名簿をエクセルで作って名前で検索できる状態にしていれば、顧客数が20名でも対象です。

エクセルで顧客管理をしても問題ありませんか?

問題ありません。ただし壊れやすい点が5つあります。電話番号の先頭0が消える、日付形式が混在する、複数人の同時編集で上書きされる、コピーが増殖して原本が分からなくなる、予約台帳と二重入力になる、の5点です。ファイルのパスワード設定とバックアップは個人情報保護法第23条の安全管理措置として必要です。

無料の顧客管理アプリを選ぶとき、何を見ればいいですか?

上限(人数・件数)、CSVで書き出せるか、サービス終了時のデータの扱い、広告表示、事業者の情報開示の5点です。とくに書き出せないサービスは乗り換えるときにデータを取り出せなくなるため、契約前に必ず確認してください。

外部サービスに顧客データを預けても大丈夫ですか?

個人データの取扱いを委託することにあたるため、個人情報保護法第25条により委託先の監督義務がかかります。プライバシーポリシーと利用規約を読み、事業者の名称・所在地が明記されているか、データの保管場所とセキュリティの記載があるかを確認してください。運営者が分からないサービスは選ばないのが最低ラインです。

顧客名簿が漏れたら報告義務がありますか?

施行規則第7条の4類型(要配慮個人情報を含む/財産的被害のおそれ/不正の目的をもって行われたおそれがある行為による/本人の数が千人超)のいずれかに当たれば、個人情報保護委員会への報告が必要です。3番目には人数の下限がないため、不正アクセスの場合は顧客が数十名でも対象になりえます。