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サロンの無断キャンセルにキャンセル料は請求できるか。上限を決めている条文がある

公開日: 2026-08-06

「無断キャンセル」で検索している方には、立場の違う2種類の人がいます。うっかりしてしまったお客様と、実際に被害に遭った店側です。

先に前者に短く答えます。気づいた時点で連絡してください。 連絡が遅れるほど話がしづらくなりますが、連絡が来ないほうが店側にとっては困ります。キャンセル料の定めがあるサロンなら請求されることもありますが、それは連絡しなかった場合も同じです。

言い方は簡単で足ります。「本日○時に予約していた○○です。伺えず申し訳ありませんでした。キャンセル料のご案内があればお支払いします」——これだけです。言い訳を組み立てる必要はありません。 そして次回の予約を取り直したいなら、その電話でそのまま伝えてください。店側は次に来てもらえるほうを望んでいます。

ここから先は店側に向けた内容です。 請求できるのかどうかを、条文の枠組みから整理します。条文はすべてe-Gov法令検索で現行条文を取得して確認しました(2026-08-06)。

なお、この記事は制度の説明です。個別の事案について「あなたの場合は請求できます」という結論は出しません。個別の事案は弁護士に相談してください。

この記事でわかること

  • 予約が契約であることと、無断キャンセルがどの条文に当たるのか
  • 請求の根拠として実は強い条文(あまり紹介されないもの)
  • キャンセル料に上限を課している条文と、100%と決めても無効になりうる理由
  • 「平均的な損害」をサロンの原価構造に引き直して考える材料
  • 2022年の改正で入った、金額の根拠を説明する努力義務
  • キャンセルポリシーをどこに書けば効くのか
  • 無断キャンセル後に送る連絡文面の例(2種類)
  • 請求より予防のほうが安い理由と、その具体策

「請求したいのか、減らしたいのか」を分ける

実際に被害に遭った直後は、請求のことを考えます。それは自然なことです。 2〜3時間の枠が空き、材料も用意していて、その時間の売上がゼロになったのだから当然です。

ただ、少し落ち着いてから確認しておきたいのは、目的が回収なのか、再発防止なのかです。

目的必要なことかかるもの
回収契約の存在・金額の根拠・請求の手続き手間・関係悪化・回収できない可能性
再発防止予約時のポリシー提示・リマインド・記録初期の設定だけ

この記事は両方扱いますが、結論として後者を先に手当てすることを勧めます。 理由は最後に書きます。

まずは「請求できるのか」に答えます。ここを知らないまま予防に進むと、キャンセル料の設定を間違えます。

1. 予約は契約である

出発点はここです。

契約は、契約の内容を示してその締結を申し入れる意思表示(以下「申込み」という。)に対して相手方が承諾をしたときに成立する。 2 契約の成立には、法令に特別の定めがある場合を除き、書面の作成その他の方式を具備することを要しない。

出典: 民法第522条(e-Gov法令検索、2026-08-06取得)

第2項が重要です。 契約書がなくても契約は成立します。電話での「では14時で」も、予約フォームからの申込みと店側の確定も、契約です。

つまり、無断キャンセルは「約束を破られた」という感情の問題ではなく、契約上の話として扱えます。

2. 来なかったことは債務不履行にあたりうる

債務者がその債務の本旨に従った履行をしないとき又は債務の履行が不能であるときは、債権者は、これによって生じた損害の賠償を請求することができる。ただし、その債務の不履行が契約その他の債務の発生原因及び取引上の社会通念に照らして債務者の責めに帰することができない事由によるものであるときは、この限りでない。

出典: 民法第415条第1項(e-Gov法令検索、2026-08-06取得)

ただし書に注意してください。 「債務者の責めに帰することができない事由」による場合は請求できません。急病や災害は、この場合に当たりうるものです。無断キャンセルの全件が一律に請求対象になるわけではありません。

3. 実は請求の根拠として強いのは536条2項

無断キャンセルの記事であまり触れられていない条文があります。

債権者の責めに帰すべき事由によって債務を履行することができなくなったときは、債権者は、反対給付の履行を拒むことができない。この場合において、債務者は、自己の債務を免れたことによって利益を得たときは、これを債権者に償還しなければならない。

出典: 民法第536条第2項(e-Gov法令検索、2026-08-06取得)

サロンに引き直すと、次のような関係になります。

  • サロンの債務 = 施術を提供すること
  • お客様の債務(反対給付) = 代金を支払うこと
  • お客様が来なかったために施術ができなくなった = 債権者(お客様)の責めに帰すべき事由による履行不能

この条文の考え方では、お客様は代金の支払いを拒めないことになります。第415条の「損害を立証して賠償を請求する」構成より、こちらのほうが直接的です。

ただし後半に条件がついています。 「自己の債務を免れたことによって利益を得たとき」は、それを償還しなければなりません。施術をしなかったことで使わずに済んだ材料費などがこれに当たりえます。つまり全額そのままではなく、使わなかった分を差し引く構造です。

この条文の適用も、個別の事案では争いになりえます。 実際にどう扱われるかは事案によって変わります。弁護士に相談してください。

4. ここが核心:キャンセル料には上限がある

「当日キャンセル100%」と決めているサロンがあります。しかし、決めれば必ず有効になるわけではありません。

次の各号に掲げる消費者契約の条項は、当該各号に定める部分について、無効とする。 一 当該消費者契約の解除に伴う損害賠償の額を予定し、又は違約金を定める条項であって、これらを合算した額が、当該条項において設定された解除の事由、時期等の区分に応じ、当該消費者契約と同種の消費者契約の解除に伴い当該事業者に生ずべき平均的な損害の額を超えるもの 当該超える部分

出典: 消費者契約法第9条第1項第1号(e-Gov法令検索、2026-08-06取得)

条文の構造を分解します。

要素内容
対象解除に伴う損害賠償の額の予定・違約金の条項
基準同種の契約の解除に伴い事業者に生ずべき平均的な損害の額
効果平均的な損害を超える部分が無効

無効になるのは条項全体ではなく「超える部分」です。 つまり100%と決めていても、平均的な損害が仮に相当額であれば、その額までは効いて、超えた分だけが無効になる、という構造です。

ここが検索者が最も知りたい部分だと思います。 「決めておけば取れる」でも「一切取れない」でもなく、上限があるということです。

条文はさらに、時期による区分にも言及しています。「当該条項において設定された解除の事由、時期等の区分に応じ」という部分です。当日・前日・3日前で金額を分けている場合、それぞれの区分ごとに平均的な損害と比べられるという読み方になります。

なお、同法には別の規定もあります。

消費者の不作為をもって当該消費者が新たな消費者契約の申込み又はその承諾の意思表示をしたものとみなす条項その他の法令中の公の秩序に関しない規定の適用による場合に比して消費者の権利を制限し又は消費者の義務を加重する消費者契約の条項であって、民法第一条第二項に規定する基本原則に反して消費者の利益を一方的に害するものは、無効とする。

出典: 消費者契約法第10条(e-Gov法令検索、2026-08-06取得)

金額以外の部分(キャンセルの申し出方法を極端に狭めるなど)についても、無効になりうる余地があるということです。

5. 「平均的な損害」をサロンの原価構造に引き直す

では平均的な損害とは何なのか。条文に金額は書かれていません。 業態・時間帯・キャンセルの時期によって変わるものであり、この記事で「サロンは○円」と断定することはできません。

代わりに、構成要素を分解する材料を示します。 自店の数字で考えるための枠です。

要素1:その枠のために支出した費用

費用発生するか
事前に開けた薬剤・ジェル開封していれば発生
取り寄せたパーツ・材料発注済みなら発生
用意しただけで使っていないもの発生しない(次の人に使える)

「用意した」と「消費した」は別です。 開封していない材料は損害になりません。ここを区別しないと、根拠を説明できない金額になります。

要素2:埋まらなかった枠の機会損失

ここが最も議論になる部分です。枠が埋まらなかったことによる売上の逸失を、そのまま損害と言えるかどうかは単純ではありません。

考える材料は次のとおりです。

  • その枠を他のお客様で埋められた可能性はどのくらいあったか(直前の予約が入る店なら、逸失は小さくなります)
  • 人件費は変動費か固定費か(月給のスタッフなら、その枠が空いても人件費は同額です。つまり「人件費が節約できた」わけではありません)
  • 通知の時期(当日連絡なしと3日前の連絡では、埋め直せる可能性が違います)

2番目は誤解されやすい点です。 「人件費がかかったから損害」ではありません。月給制ならその費用はキャンセルがあってもなくても発生しています。損害として計算するのは「得られなかった利益」の側です。

要素3:キャンセルによって節約できた費用

第536条第2項の後半に出てきた「自己の債務を免れたことによって利益を得たとき」がこれです。

  • 使わずに済んだ材料費
  • (時間給のスタッフを帰した場合の)その分の人件費

これは差し引く側の要素です。

結論として言えること

金額は自店で計算するしかありません。 そして計算した根拠を残しておく必要があります。理由は次の項目です。

6. 金額の根拠を説明する努力義務

消費者契約法の同じ条文の第2項に、次の規定があります。

事業者は、消費者に対し、消費者契約の解除に伴う損害賠償の額を予定し、又は違約金を定める条項に基づき損害賠償又は違約金の支払を請求する場合において、当該消費者から説明を求められたときは、損害賠償の額の予定又は違約金の算定の根拠(第十二条の四において「算定根拠」という。)の概要を説明するよう努めなければならない。

出典: 消費者契約法第9条第2項(e-Gov法令検索、2026-08-06取得)

努力義務です。 説明しなかったから直ちに違法、という規定ではありません。

しかし実務上の意味は大きいです。請求した場面で「その金額の根拠は何ですか」と聞かれることが想定されているということです。

そして根拠を説明できない金額は、説明を求められたときに困るだけでなく、そもそも平均的な損害を超えている可能性が高いです。 逆に言えば、根拠を計算しておくことが、そのまま条項の有効性を確かめる作業になります。

やっておくべきことは1つです。 キャンセル料を設定するとき、その金額をどう計算したかを1枚のメモに残してください。材料費・埋め直せる確率・時期の区分の3点で足ります。

7. キャンセルポリシーはどこに書けば効くのか

金額を決めても、お客様がそれを見ていない状態では前提が崩れます。

定型取引を行うことの合意をした者は、次に掲げる場合には、定型約款の個別の条項についても合意をしたものとみなす。 一 定型約款を契約の内容とする旨の合意をしたとき。 二 定型約款を準備した者があらかじめその定型約款を契約の内容とする旨を相手方に表示していたとき。

出典: 民法第548条の2第1項(e-Gov法令検索、2026-08-06取得)

「あらかじめ」という言葉に注目してください。 予約が成立した後に表示されるページに書いてあっても、予約の時点では表示されていません。

同条の第2項には、次の規定もあります。

前項の規定にかかわらず、同項の条項のうち、相手方の権利を制限し、又は相手方の義務を加重する条項であって、その定型取引の態様及びその実情並びに取引上の社会通念に照らして第一条第二項に規定する基本原則に反して相手方の利益を一方的に害すると認められるものについては、合意をしなかったものとみなす。

表示していても、内容が一方的に不利なら合意とみなされない場合があるということです。

実務に落とすと、次の3点になります。

  1. 予約する画面(予約を確定する前)にキャンセルポリシーを置く
  2. 金額と時期の区分を具体的に書く(「所定のキャンセル料」では内容が特定できません)
  3. 予約確認メールにも同じ内容を入れる(見た記録が残ります)

1が最も抜けやすい部分です。 店舗ページの下部やよくある質問の中にだけ書いてある状態は珍しくありません。

8. 経済産業省のレポートについて

無断キャンセルの被害額として「年間約2000億円」という数字が引用されることがあります。出どころを確認しました。

2018年に経済産業省が委託調査事業として取りまとめた「No show(飲食店における無断キャンセル)対策レポート」によると、被害額は推計で年間約2000億円にも上ると言われている。

出典: 無断キャンセルが引き起こす負のスパイラル(経済産業省 METI Journal ONLINE、2019年12月3日、2026-08-06取得)

このレポートは飲食店を対象としたものです。 サロンの数字ではありません。この2000億円をサロンの被害額として引用することはできず、サロンに当てはまると断定することもできません。

参考になるのは、構造の指摘の部分です。 同じ記事には、無断キャンセルによる損失を補うために予約をコースのみにする店や、料金を高く設定する店があることが書かれています。損失が他のお客様の条件に転嫁されるという構造です。

サロンでも同じことは起こりえます。無断キャンセルが多い店が事前決済のみにしたり、指名料を上げたりすれば、来ているお客様の条件が悪くなります。予防に投資する理由の1つがここにあります。

9. 無断キャンセル後に送る文面

ここは実際に使えるものを載せます。2種類必要です。 目的が違います。

文面1:次回につなげる場合(キャンセル料を請求しない)

○○様

本日○時のご予約、ご来店をお待ちしておりました。
お体の具合など、お変わりないでしょうか。

ご都合が変わることもあるかと思います。
またご都合のよいときにご連絡いただければ、
あらためてお日にちをご用意いたします。

○○(店名)

督促の言葉を入れないでください。 この文面の目的は、次回の来店の可能性を残すことです。気まずくて連絡できない状態を解くのが役割です。

「お待ちしておりました」は事実の伝達として入れています。これ以上責める必要はありません。

文面2:キャンセル料を案内する場合

○○様

本日○時のご予約について、ご来店の確認ができませんでした。

ご予約時にご案内しておりますキャンセルポリシーに基づき、
当日キャンセル料として○○円をご案内いたします。

内訳:
・ご予約枠のためにご用意した材料 ○○円
・ご予約枠の確保分 ○○円

お支払い方法は次のとおりです。
(振込先/次回来店時のいずれか)

ご事情がおありでしたら、ご遠慮なくお知らせください。

○○(店名)

内訳を入れてください。 前述の第9条第2項が、説明を求められたときに算定根拠の概要を説明する努力義務を定めています。聞かれてから用意するのではなく、最初から書いておくほうが早いです。

そして最後の1行を必ず入れてください。急病などの事情があった場合に、お客様から言い出せる余地を残すためです。 第415条第1項のただし書に当たる場合、請求できないこともあります。

送らないほうがよいもの

  • 法的な文言を並べた文書(初回の連絡でこれを送ると、関係が終わります)
  • 一斉送信のテンプレート感が出る文面(個別の事情に触れていないことが伝わります)
  • 金額だけを書いた短文(根拠が無い請求に見えます)

弁護士に依頼した場合の費用相場については、この記事では触れません。 事案の内容と依頼する範囲によって変わるもので、推測で書ける性質のものではありません。実際にかかる費用は、相談時に見積もりを確認してください。

10. 請求より予防のほうが安い

ここが実務上の結論です。回収は、金額に対して手間が大きすぎます。

請求予防
1件あたりのコスト連絡・交渉・場合によっては法的手続き初期設定のみ
成功率支払われない場合がある発生件数が減る
関係への影響悪化する影響なし
効き方その1件だけ以後すべての予約

そして予防の中身は、特別なものではありません。 次の4つで足ります。

予防策1:前日または直前のリマインド

無断キャンセルの一定部分は、悪意ではなく失念です。 予約から来店までの期間が長ければ長いほど、忘れる確率は上がります。

リマインドの送信タイミングは、業態によって最適が違います。

タイミング向く業態
前日の夜翌日の予定を確認する習慣に乗る。汎用的
当日の朝当日の予定として認識してもらえる
数時間前直前の失念に効く。ただし「今から準備」には遅い

予約管理の仕組みを使っている場合、これは自動で送れる機能として用意されていることが多いです。参考として、当サービスでは前日の指定時刻・当日の指定時刻・予約の指定時間前(1/2/3/6/12/24/48時間前)から選べます(初期設定は前日20時)。リマインドメールに自店の文章を追記することもできます。

選べる幅は、使っているサービスによって違います。 「前日固定」のものもあります。自店の業態に合うかを確認してください。

予防策2:予約する時点でのキャンセルポリシーの提示

前述の第548条の2の話がそのままここに繋がります。予約を確定する画面に表示されているかどうかを確認してください。

そしてこれは、請求のためだけの措置ではありません。 キャンセル料があると分かっていること自体が、予約を軽く扱わせない効果を持ちます。

予防策3:繰り返す方の把握

同じ方が繰り返すことがあります。 1回目は失念でも、2回目・3回目が続く場合は対応を変える判断が必要です。

そのためには記録が必要です。 記憶では分かりません。予約履歴にキャンセルの記録が残っていれば、次の予約が入ったときに気づけます。

対応の選択肢は次のとおりです。

  • 事前決済または前金をお願いする
  • 予約時に電話で確認を入れる
  • 予約の受付を控える

ここで正直に書いておくと、当サービスに事前決済の機能はありません。 キャンセル料を自動で徴収する機能もありません。前金を取る運用が必要な場合は、それができるサービスを選んでください。 選択肢の比較は美容室の予約システム比較ホットペッパーとの比較に整理しています。

当サービスでできるのは、キャンセルの記録が予約履歴に残ること、キャンセル期限を時間単位で設定できること、リマインドを自動で送ることです。範囲は料金プランに掲載しています。

記録は3種類に分けて残す

「キャンセル」でまとめて記録すると、後で判断できません。分けておくのは次の3つです。

区分内容扱い
事前キャンセル期限内に連絡があった通常の運用。記録は残すが対応は変えない
直前キャンセル期限後だが連絡はあった回数を見る。続くなら声をかける
無断キャンセル連絡がないまま来店しなかった1件目から記録する

この3つを分けておくと、2回目が起きたときに判断ができます。 「前も連絡なしだった」のか「前は連絡があった」のかで、取るべき対応が変わります。

そして記録するのは件数だけでなく日時も残してください。 特定の曜日・時間帯に集中していることがあります。集中しているなら、その枠の予約の取り方自体を見直す材料になります。

予防策4:埋め直せる状態を作る

発生をゼロにはできません。 空いた枠を埋められるようにしておくのも予防の一部です。

  • キャンセル待ちを受け付けておく
  • 直前の空き枠が予約ページに反映されるようにしておく

「電話でしか予約を受けていない」状態だと、当日の空き枠は埋まりません。 空いたことを知らせる手段がないためです。

リピート率そのものを上げる話は美容室のリピート率で扱っています。通っているお客様の無断キャンセル率は、初回のお客様より低くなります。 予防策として、これも効きます。

11. この記事で扱わないこと

正直に線を引いておきます。

  • 「〇円まで請求できる」という断定 — 平均的な損害は自店の数字と事案によって変わります
  • 個別の事案の結論 — 報酬を得て個別の法律事務を扱うことは弁護士法第72条の問題になります(弁護士法、e-Gov法令検索、2026-08-06取得)
  • 弁護士費用の相場の推測 — 依頼内容によって変わります
  • 裁判での見通し — 事案ごとの判断です

キャンセル料の設定額を決めるとき、金額が大きい場合や争いになっている場合は、弁護士に相談してください。

まとめ

  • 予約は契約であり、契約書がなくても成立する(民法第522条第2項)
  • 来なかったことは債務不履行にあたりうる(第415条第1項)。ただし「責めに帰することができない事由」なら請求できない
  • 請求の根拠として直接的なのは第536条第2項(債権者の責めに帰すべき事由による履行不能→反対給付を拒めない)。ただし免れた利益は償還する
  • キャンセル料には上限がある。消費者契約法第9条第1項第1号により、平均的な損害の額を超える部分は無効。100%と決めても超過部分は無効になりうる
  • 平均的な損害は自店で計算するしかない。材料費(消費した分のみ)・埋め直せる可能性・時期の区分で分解する。人件費が固定費なら「節約できた費用」ではない
  • 金額の根拠を説明する努力義務がある(同条第2項)。設定時に計算のメモを残しておく
  • キャンセルポリシーは予約を確定する前の画面に置く(民法第548条の2の「あらかじめ表示」)
  • 経産省の2000億円は飲食店の数字。サロンに当てはまるとは言えない
  • 請求より予防のほうが安い。リマインド・予約時のポリシー提示・繰り返す方の把握・埋め直せる状態の4つで足りる
  • 個別の事案は弁護士に相談する

よくある質問

無断キャンセルにキャンセル料を請求できますか?

条文上の根拠はあります。予約は契約であり(民法第522条第1項)、来なかったことは債務不履行にあたりえます(第415条第1項)。また、お客様の責めに帰すべき事由で施術ができなくなった場合、お客様は反対給付の履行を拒めないという規定もあります(第536条第2項)。ただし請求できる金額には上限があり、個別の事案について請求できるかどうかは弁護士に相談してください。

キャンセル料を100%と決めておけば全額請求できますか?

そうはなりません。消費者契約法第9条第1項第1号は、解除に伴う損害賠償・違約金の額が「平均的な損害の額」を超える場合、その超える部分を無効としています。100%と決めていても、それが平均的な損害を超えていれば超過部分は無効になりえます。

「平均的な損害」とはいくらですか?

金額は条文に書かれていません。同種の契約の解除に伴い事業者に生ずべき平均的な損害の額であり、業態・時間帯・キャンセルの時期によって変わります。サロンの場合は、その枠のために用意した材料費、埋まらなかった枠の機会損失などが構成要素になります。断定できる数字を出せる性質のものではありません。

お客様から金額の根拠を聞かれたら答える必要がありますか?

消費者契約法第9条第2項に、損害賠償や違約金の支払を請求する場合に消費者から説明を求められたときは、算定根拠の概要を説明するよう努めなければならないという規定があります。努力義務ですが、根拠を説明できない金額を設定していると、この場面で困ります。

キャンセルポリシーはどこに書いておけばいいですか?

予約する時点でお客様が見られる場所です。民法第548条の2の定型約款の考え方では、契約の内容とする旨をあらかじめ相手方に表示していた場合に個別の条項も合意したものとみなされます。予約完了後にだけ表示されるページに書いてあっても、予約時点では表示されていません。

請求と予防のどちらを先に手当てすべきですか?

予防です。請求は手間がかかり、関係も悪化します。前日のリマインド、予約時点でのキャンセルポリシーの提示、繰り返す方の把握の3つは、いずれも仕組みで対応できます。回収できる金額より、発生件数を減らすほうが効きます。