「整体院 リピート率 平均」で数字を探しても、自院と比べられる形では出てきません。
理由は2つあります。リピート率に統一された定義がないこと、そして整体院に固有の事情として、症状が改善すれば来院が減るという構造があることです。
つまり整体院のリピート率は、高ければ良いとは言い切れない指標です。この記事は、その前提を踏まえたうえで自院の数字を出す手順と、扱い方を書きます。
この記事でわかること
- 業界平均が公表されていない理由と、整体院に固有の事情
- 改善による終了と、途中離脱を分けて記録する必要がある理由
- 回数券が数字を歪める仕組み
- 自院の数字を出す計算手順
- 効果の断定を避けながら継続してもらう打ち手
整体院のリピート率が「高いほど良い」と言えない理由
施術で症状が改善すれば、来院の必要は減ります。改善して卒業した人は、数字の上では「2回目が来なかった人」と同じ扱いになります。
一方で、次のような理由で来なくなった人も、同じく未達として集計されます。
- 変化を感じられなかった
- 費用が続かなかった
- 次回の日程が決まらないまま忘れた
- 通いにくかった(立地・営業時間・予約の取りにくさ)
この2種類が同じ数字に混ざっている限り、施策の評価はできません。
対処: 離脱の理由を2つに分けて記録する
最終来院時に、次のどちらかを記録してください。難しい仕組みは不要で、カルテに一言残すだけで足ります。
| 記録 | 意味 |
|---|---|
| 改善終了 | 目的が達成され、こちらから「一旦様子を見ましょう」と伝えた |
| 継続予定 | 次回来院を提案したが、日程が決まっていない/来なかった |
集計するときは、「継続予定」だけを母集団にします。これで、施策で動かせる部分だけを見られます。
回数券は数字を歪める
回数券の2回目来院は、すでに支払った分を消化しているだけです。自由意思での再来とは意味が違います。
混ぜると次のことが起きます。
- 回数券を売った月の翌月以降だけ、リピート率が上がって見える
- 券が終わった時点で数字が急落する
分けて数えてください。追うべきは次の2つです。
- 回数券の消化率 — 有効期限内に使い切れているか
- 券が終わったあとの再来率 — 券が切れたあとも残るか
整体院の回数券は、エステと違って特定商取引法の特定継続的役務提供の対象外です(この点は整体院の回数券運用で扱っています)。ただし有効期限内に使い切れない状態はトラブルの元なので、消化状況は追う必要があります。
自院の数字を出す手順
ステップ1: 母集団を決める
- 回数券の購入者を含めるか(推奨: 分けて集計)
- 「改善終了」を除外するか(推奨: 除外し、継続予定のみを母集団にする)
決めたら記録に残してください。後から思い出せなくなります。
ステップ2: 観測期間を決める
整体院は、初回の施術後に「次は◯日後に」と間隔を提案できる業態です。その提案間隔の2倍程度を観測期間の目安にしてください。
| 初回に提案した間隔 | 観測期間の目安 |
|---|---|
| 1週間後 | 30日 |
| 2週間後 | 45日 |
| 1か月後 | 75日 |
一度決めたら変えないでください。期間を変えながら比べると、施策の効果と定義の変更が混ざります。
ステップ3: 計算する
新規リピート率 = 期間内の新規客(継続予定のみ)のうち、
観測期間内に2回目が来た人数 ÷ 母集団の人数
計算例
4月の新規が14名、うち「改善終了」が2名、回数券購入者が3名。母集団は 14 − 2 − 3 = 9名。 このうち5月中(観測期間30日)に2回目が来たのが6名。
6 ÷ 9 = 約67%
この67%に他院との比較の意味はありません。意味があるのは翌月・翌々月の同じ計算式で出した数字との比較です。
母数が小さいときの注意
新規が月10名なら、1人の増減で10ポイント動きます。月20名を下回るなら3か月移動平均で見てください。単月の上下に反応して施策を変えると、何が効いたのか分からなくなります。
上げるための打ち手
1. 施術直後にその場で次回の日程を決める
整体院ではこれが最も効きます。理由は、痛みが引くと来院の動機が下がるためです。施術直後は体感の変化が最も大きい瞬間で、次回の話を受け入れてもらいやすい状態にあります。
「次は2週間後くらいが目安です」と伝えるだけでは、日程は決まりません。その場でカレンダーを開いて候補日を出してください。
日程が決まらない場合も、その場で予約ページをブックマークしてもらうところまでやってください。会計時にQRコードを読み取ってもらうと、実際にブックマークまで到達します。
2. 次回来院の理由を、痛みの有無以外で伝える
「痛くなったらまた来てください」と言うと、痛くならなければ来ません。
伝え方を変えます。施術で何を確認し、次回に何を見るのかを具体的に言います。
- 「今日は張りが強かった部分をほぐしました。2週間後に戻り具合を見せてください」
- 「今の状態を保てているかを確認したいので、次は◯日後に」
効果を断定しないことが前提です。整体は資格が不要な医業類似行為であり、医療行為ではありません(整体院の開業に資格が不要な理由で扱っています)。治る・治療といった表現や、医師の診断に相当する説明は避けてください。保険が使えないことの案内も含め、広告・説明上の注意点は整体院と健康保険の広告上の注意にまとめています。
3. 間隔が空いている人に連絡する
「前回来院から◯日経過して、次回予約が入っていない人」を抽出して連絡します。
抽出条件の例です。
- 前回来院から提案間隔の2倍以上が経過している
- 未来の予約が入っていない
- 「改善終了」の記録が無い
3つ目を条件に入れてください。卒業した人に「そろそろ」と連絡するのは、押し売りに受け取られます。
4. 初回で終わった人の原因を絞る
- 施術内容と、体に起きていることを説明したか
- 次回の目安を具体的な日数で伝えたか
- 費用の見通しを伝えたか — 何回くらい通う想定かが分からないと、2回目の判断ができません
- 初回価格から通常価格への差が大きすぎないか
3が整体院では効きます。「あと何回かかるか分からない」という不安が、2回目を止めます。回数を断定できない場合も、「まず3回受けてから状態を見て相談しましょう」といった区切りを示すと判断しやすくなります。
記録フォーマット
集計が続かない原因は、毎月どこかが変わることです。表計算1枚で固定してください。
シート1: 定義(最初に書いて、以後変えない)
| 項目 | 決めた内容の例 |
|---|---|
| 母集団 | その月の新規のうち「継続予定」の人(改善終了・回数券購入者は除く) |
| 観測期間 | 30日(初回に提案する間隔が2週間のため) |
| 判定 | 来院ベース |
| 除外 | 改善終了、回数券購入者 |
シート2: 月次の記録
| 対象月 | 新規 | うち改善終了 | うち回数券 | 母集団 | 30日以内に2回目 | リピート率 | メモ |
|---|---|---|---|---|---|---|---|
| 2026-04 | 14 | 2 | 3 | 9 | 6 | 66.7% | |
| 2026-05 | 16 | 1 | 4 | 11 | 8 | 72.7% | 施術直後の日程決定を開始 |
「改善終了」の列を独立させておくのが要点です。ここが不自然に増えていたら、都合の悪い離脱を改善扱いにしていないかを見直せます。
判定できるまでの時間
観測期間が30日なら、4月の新規について判定できるのは5月末です。整体院は観測期間が短く取れるぶん、施策の反応が早く見えます。それでも単月の上下では判断せず、3か月の推移で見てください。
数字を良く見せる操作をしない
- 回数券の消化をリピートに混ぜる — 券を売った月だけ数字が上がります
- 観測期間を途中で延ばす — 改善したのは定義であって院ではありません
- 「改善終了」を後から水増しする — 都合の悪い離脱を改善扱いにすると、施策の評価ができなくなります
3は自分を騙す形になるので、特に避けてください。記録は施術直後にその場で付け、後から書き換えないでください。
抽出できる状態が前提
打ち手の3は、抽出ができることが前提です。
- 前回来院からの経過日数
- 未来の予約の有無
- 「改善終了」かどうかの記録
この3つを突き合わせるには、予約と顧客が同じ場所にある必要があります。予約を紙の台帳、顧客情報を別のファイルで持っていると、元データが揃いません。
Excelで管理している場合の移行手順は整体院の顧客管理をExcelから移行する手順に、次回予約を仕組みにする方法は慢性症状のお客様の予約を仕組み化するにまとめています。
まとめ
- リピート率の業界平均は公表されていない。整体院は改善によって来院が減るため、高いほど良いとも言い切れない
- 「改善終了」と「継続予定」を分けて記録する。分けないと、効いた結果と続かなかった結果が同じ数字に混ざる
- 回数券の消化は分けて数える。混ぜると券を売った月だけ数字が上がる
- 観測期間は初回に提案した間隔の2倍程度
- 打ち手は、施術直後の日程決定 → 痛み以外の来院理由の提示 → 間隔が空いた人への連絡 → 初回離脱の原因特定の順
- 継続を促すとき、効果の断定は避ける(医業類似行為であり医療行為ではない)
料金と機能の範囲は料金プランに掲載しています。