整体・カイロプラクティック

整体院で『保険が使えます』と案内してよいか——接骨院との違いを正しく伝える

公開日: 2026-07-19

「保険適用」という言葉は集客上の訴求力が強いため、整体院の広告でも見かけることがあります。しかし、整体・カイロプラクティックの施術は、そもそも健康保険制度の対象になる施術ではありません。この記事では、なぜそう言えるのか、そして接骨院とはどこが違うのかを公式情報にもとづいて整理します。

健康保険が使えるのは「柔道整復師」の施術のみ

健康保険で費用の一部が給付される対象は、柔道整復師の国家資格を持つ人が施術する接骨院・整骨院に限られます。全国健康保険協会(協会けんぽ)は、給付の対象となる症状を次のように明示しています。

整骨院や接骨院で骨折、脱臼、打撲及び捻挫(いわゆる肉ばなれを含む。)の施術を受けた場合に保険の対象になります。なお、骨折及び脱臼については、緊急の場合を除き、あらかじめ医師の同意を得ることが必要です。

出典: 全国健康保険協会 柔道整復師のかかり方(2026-07-19取得)

同ページでは、健康保険の対象となるケースも具体的に列挙されています。

単なる肩こり、筋肉疲労/慰安目的のあん摩・マッサージ代わりの利用/病気(神経痛・リウマチ・五十肩・関節炎・ヘルニアなど)からくる痛み・こり/脳疾患後遺症などの慢性病/過去の交通事故等による後遺症/症状の改善の見られない長期の治療

出典: 同上(2026-07-19取得)

つまり、柔道整復師の施術であっても、慢性的な症状や肩こりは保険の対象外です。整体・カイロプラクティックは柔道整復師の資格制度そのものの外にあるため、急性の外傷であっても保険給付の対象にはなりません。

整体院の施術はなぜ対象外なのか

前回の記事「整体院・カイロプラクティックは資格がなくても開業できる、その正確な意味」で解説したとおり、整体・カイロプラクティックは国家資格を必要としない「医業類似行為」です。健康保険の療養費制度は、あん摩マッサージ指圧師・はり師・きゅう師・柔道整復師という免許制度を前提に設計されているため、そもそも整体・カイロプラクティックはこの制度の枠外にあります。

広告表現で気をつけたいこと

「保険適用」「保険が使える」といった表現を整体院の広告に用いると、実態と異なる案内になり、景品表示法上の優良誤認表示に該当するおそれがあります。景品表示法は、実際より著しく優良であると誤認させる表示を禁止しています。

事業者が、自己の供給する商品・サービスの取引において、その品質、規格その他の内容について、一般消費者に対し、実際のものよりも著しく優良であると示すもの(中略)であって、不当に顧客を誘引し、一般消費者による自主的かつ合理的な選択を阻害するおそれがあると認められる表示を禁止しています(優良誤認表示の禁止)。

出典: 消費者庁 優良誤認とは(2026-07-22取得)

保険が適用されるかどうかは、協会けんぽが示すとおり施術内容・資格によって明確に決まっているため、実態と異なる「保険適用」表示は、この優良誤認表示の典型例になりえます。集客上、次のような誠実な言い換えが安全です。

  • 「保険は適用されません(全額自己負担)」を明記したうえで、価格の分かりやすさ・コースの柔軟さを訴求する
  • 「接骨院ではなく整体院です」という違いを、来店前の段階で明確に伝える
  • 慢性的な肩こり・腰痛など、保険適用外の症状にこそ専門的に向き合える点を訴求する(協会けんぽの案内でも肩こり・慢性病は保険対象外と明記されているため、この訴求は事実と矛盾しません)

お客様からの問い合わせを減らす仕組み

「保険は使えますか」という問い合わせを受けることもあります。予約ページやメニュー説明に、保険適用外であることと料金をあらかじめ明記しておくと、来店前の認識のズレを防げます。Salon-Bookyのオンライン予約ページでは、メニューごとに説明文と料金を設定できるため、こうした注意書きをメニュー選択の画面で必ず目にする形にできます。

まとめ

整体・カイロプラクティックは、柔道整復師の資格制度の枠外にあるため、健康保険の対象にはなりません。これは施術の質の問題ではなく、法制度上の位置づけの違いです。広告で「保険適用」を謳うことは避け、保険適用外であることを前提にした誠実な訴求に切り替えることが、長期的な信頼につながります。