「整体院は資格がなくても開業できる」という話は広く知られていますが、その法的な根拠を正確に説明できる開業者は多くありません。この記事では、厚生労働省の公式通知にもとづいて、なぜ資格が不要なのか、そして無資格だからこそ気をつけなければならないことを整理します。
「医業類似行為」という分類
厚生労働省は、あん摩マッサージ指圧・はり・きゅう・柔道整復以外の手技による施術を「医業類似行為」と分類しています。整体・カイロプラクティックはこの医業類似行為に含まれます。
医業類似行為のうち、あん摩マッサージ指圧、はり、きゅう及び柔道整復については、(中略)それぞれの免許を有する者でなければこれを行ってはならないものである(中略)。あん摩マッサージ指圧、はり、きゅう及び柔道整復以外の医業類似行為については、(中略)当該医業類似行為の施術が医学的観点から人体に危害を及ぼすおそれがあれば禁止処罰の対象となるものであること。
出典: 厚生労働省 医業類似行為に対する取扱いについて(医事第58号)(2026-07-19取得)
つまり、あん摩マッサージ指圧師・はり師・きゅう師・柔道整復師の4つは国家資格が必須である一方、整体・カイロプラクティックは資格が無くても施術自体は禁止されていません。危害を及ぼすおそれのある行為でなければ、税務署への開業届だけで開業できるのはこのためです。
接骨院・整骨院との違い
「接骨院」「整骨院」は柔道整復師の国家資格を持つ人が開設する施設です。柔道整復師は前述の4資格の一つであり、法律上の位置づけが整体院とは異なります。
| 整体院・カイロプラクティック | 接骨院・整骨院 | |
|---|---|---|
| 必要な資格 | 不要 | 柔道整復師(国家資格) |
| 施術できる範囲 | リラクゼーション目的の手技 | 骨折・脱臼・打撲・捻挫の施術も可能 |
| 健康保険 | 対象外(全額自己負担) | 一部の施術で対象になる場合がある |
健康保険の適用範囲については、別記事「整体院で『保険が使えます』と案内してよいか」で詳しく解説しています。
「資格不要」だからこそ気をつけたいこと
資格が不要ということは、施術内容の質を証明する国家的な裏付けが無いということでもあります。厚生労働省の通知は、カイロプラクティック療法について次のように述べています。
同報告においては、カイロプラクティック療法の医学的効果についての科学的評価は未だ定まっておらず、今後とも検討が必要であるとの認識を示す一方で、同療法による事故を未然に防止するために必要な事項を指摘している。
出典: 同上(2026-07-19取得)
同通知では、頸椎に急激な回転伸展を加える「スラスト法」など危険性の高い手技への注意、椎間板ヘルニアなど禁忌対象疾患への施術を避けること、症状が改善しない場合は医療機関の受診を促すことなどが明記されています。開業にあたっては、これらの公的な注意事項を把握したうえで、自院の施術範囲と対象外とする症状をあらかじめ明確にしておくことが、トラブル防止につながります。
開業に必要な手続き
整体院の開業自体に免許・許可は不要ですが、次の届出は必要です。
- 個人事業主として開業する場合: 税務署への「開業届」の提出
- 従業員を雇用する場合: 労働保険(労災保険・雇用保険)の加入手続き
- 法人として開業する場合: 法人設立の登記手続き
保健所への届出は、美容室・理容室のような「美容所・理容所」としての届出とは異なり、整体院は対象外です(美容所の届出手続きについては「美容室の開業費用と、開業後に毎月消えていくコストの内訳」も参考にしてください)。
まとめ
整体・カイロプラクティックが資格不要で開業できるのは、「危害を及ぼすおそれがなければ禁止されていない」という法的な位置づけによるものです。裏を返せば、危険性の高い手技や禁忌対象疾患への施術は明確に注意喚起の対象になっています。開業前にこの法的な位置づけを正確に理解しておくことは、施術の安全性だけでなく、後述する広告表現の適法性にも直結します。開業後の集客・予約管理の準備については料金プランもご覧ください。