エステサロン

エステのカルテの保存期間。法定の保存年数があるのはカルテではなく、別の書類のほう

公開日: 2026-08-06

「エステ カルテ 保存期間」という検索には、はっきりした前提の誤りが1つ含まれていることがあります。カルテの保存期間を定めた法令があると思って探しているという前提です。

ありません。 施術記録そのものの作成義務も、保存年数の定めも、法令には存在しません。

一方で、エステには「3年間保管すること」と明記された書類が実際に存在します。 ただしそれはカルテではありません。

この記事は、エステが扱う書類を3種類に分けて、それぞれの保存の意味が違うことを整理します。 条文はすべてe-Gov法令検索で現行条文を取得して確認しました(2026-08-06)。

この記事でわかること

  • エステが扱う書類は3種類に分かれ、保存の意味がそれぞれ違うこと
  • 3年という保存期間が定められているのは何なのか(条文と省令の条番号つき)
  • 概要書面・契約書面に保存期間の定めが無いこと、それでも控えを残す理由
  • カルテ(施術記録)の年数を自店で決めるときの考え方
  • 紙の書類を処分するときに、混ざっていると危ないもの

「何を何年持つのか分からない」という状態について

エステは、他の業種より書類が多い業種です。理由は、特定商取引法が特定継続的役務提供として書面の交付を義務づけているためです。

その結果、サロンの引き出しには次のものが同居することになります。

  • 施術記録(カルテ)
  • 問診票・同意書
  • 概要書面・契約書面の控え
  • 決算関係の書類

この4つはそれぞれ性質が違うのに、まとめて「書類」として扱われがちです。 そして「カルテの保存期間」を調べているうちに、決算書類の3年や医師のカルテの5年が混ざってきます。

分けるところから始めます。

エステの書類は3種類に分かれる

書類法令上の位置づけ保存期間の定め
カルテ(施術記録)規定なしなし
概要書面・契約書面交付が義務(特商法第42条)なし(交付義務のみ)
業務及び財産の状況を記載した書類前払取引なら備え置きが義務(第45条)3年(施行規則第105条第3項)

法定の保存期間があるのは3番目だけです。 順に見ていきます。

1. カルテ(施術記録)に法定の保存期間は無い

エステサロンの施術記録について、作成や保管を義務づける法令の規定はありません。

よく混同されるのが医師のカルテです。医師法第24条第2項は、診療録を5年間保存することを医師(または病院・診療所の管理者)に義務づけていますが、対象は医師が作成した診療録です。エステの施術記録は診療録ではありません。

出典: 医師法第24条(e-Gov法令検索、2026-08-06取得)

したがって年数は自店で決めます。ただし1点、個人情報保護法が関わります。

個人情報取扱事業者は、利用目的の達成に必要な範囲内において、個人データを正確かつ最新の内容に保つとともに、利用する必要がなくなったときは、当該個人データを遅滞なく消去するよう努めなければならない。

出典: 個人情報の保護に関する法律第22条(e-Gov法令検索、2026-08-06取得)

努力義務であって罰則付きの規定ではありませんが、「永久保存」と決めるのはこの条文の考え方と噛み合いません。 持ち続けている限り、漏えいしたときに漏れるデータでもあります。

エステで年数を決めるときの考え方

エステの場合、起点を「最終来店日」ではなく「契約終了日」に置くほうが実態に合います。 コース契約は期間があり、その間は来店が続くためです。

決め方向く場面
契約終了から3年コース中心のサロン
最終来店から2年都度払い中心のサロン
両方を併用両方の契約形態がある場合

3年という数字を選ぶ理由は、後述する前払取引の書類の保存期間(3年)と揃えられることです。 別々の年数にすると、書類を分けて管理する手間が増えます。実務上は揃えたほうが運用が続きます。

ただしこれは法定の要求ではなく、揃えると管理しやすいという理由です。 自店の判断で構いません。

要配慮個人情報の扱い(お客様が申告した診断名を記録した場合など)は、条文とガイドラインをもとに整体院の顧客管理をExcelから移行する手順で扱っています。カルテに既往歴の欄を作る場合は先に確認してください。

2. 概要書面・契約書面 — 交付義務はあるが、保存期間の定めは無い

エステの施術は、一定の条件を満たすと特定継続的役務提供にあたります。条文はこうなっています。

特定商取引法第41条第1項第1号は、政令で定める期間を超える期間にわたり提供することを約し、相手方が政令で定める金額を超える金銭を支払うことを約する契約を、特定継続的役務提供契約としています。

その政令の中身が次のとおりです。

  • 期間:別表第四の第二欄に掲げる期間。エステ(人の皮膚を清潔にし若しくは美化し、体型を整え、又は体重を減ずるための施術)は1月
  • 金額5万円

出典: 特定商取引に関する法律第41条同施行令第24条および別表第四(e-Gov法令検索、2026-08-06取得)

つまり、1か月を超える期間で5万円を超える契約が対象になります。

該当する場合、次の2つの書面の交付が義務になります。

書面いつ交付するか根拠
概要書面契約を締結するまでに第42条第1項
契約書面契約を締結したら遅滞なく第42条第2項

そして条文に、これらの書面の保存期間は書かれていません。 定められているのは交付義務です。書面はお客様に渡すものであって、サロン側が保管を義務づけられているものではありません。

それでも控えを残しておくべき理由

法的な義務が無いのに残す理由は、期間の起算点が契約書面の受領日になっているためです。

  • 第48条第1項:契約書面を受領した日から起算して8日を経過するまでは、書面または電磁的記録により契約を解除できる
  • 第49条第1項:8日を経過した後は、将来に向かって解除できる(中途解約)

「いつ渡したか」が分からないと、この8日の計算ができません。契約書面の控えと、交付日の記録が必要になるのはこのためです。

実務的には次の2つで足ります。

  1. 契約書面の控え(お客様に渡したものと同じ内容)
  2. 交付日の記録(署名欄に日付を入れる、または顧客管理側に交付日を記録する)

中途解約の清算ルール(解除できる金額の上限)についてはエステの中途解約と清算金額の上限で扱っています。書面交付義務の全体像はエステの特定継続的役務提供の義務にまとめているので、制度の説明はそちらを参照してください。

この記事では書類の保存という観点に絞ります。

3. 3年の保存期間があるのはこれ

ここが本題です。エステで唯一「3年」と明記されている保存期間は、次の書類のものです。

条文

特定商取引法第45条第1項は、特定継続的役務提供に係る前払取引を行うときは、主務省令で定めるところにより、その業務及び財産の状況を記載した書類を、契約に関する業務を行う事務所に備え置かなければならないとしています。

「前払取引」は同項で定義されていて、特定継続的役務提供に先立ってその相手方から政令で定める金額を超える金銭を受領する取引です。その金額は施行令第27条で5万円とされています。

同条第2項では、前払取引の相手方が、この書類の閲覧を求めることができるとされています(費用を支払って謄本・抄本の交付を求めることもできます)。

出典: 特定商取引に関する法律第45条同施行令第27条(e-Gov法令検索、2026-08-06取得)

省令が定めている中身

「業務及び財産の状況を記載した書類」の具体的な内容と保存期間は、施行規則第105条にあります。

法第四十五条第一項に規定する業務及び財産の状況を記載した書類は、貸借対照表、損益計算書及び事業報告書(会社以外の者にあつては、これらに準ずる書類)とする。 2 当該書類は、事業年度ごとに当該事業年度経過後三月以内に作成し、特定継続的役務提供等契約に関する業務を行う事務所に遅滞なく備え置かなければならない。 3 備え置いた書類は、備え置いた日から起算して三年を経過する日までの間、保管すること。

出典: 特定商取引に関する法律施行規則第105条(e-Gov法令検索、2026-08-06取得)

整理すると次のとおりです。

項目内容
何を貸借対照表・損益計算書・事業報告書(会社以外はこれらに準ずる書類)
いつまでに作る事業年度経過後3月以内
どこに置く契約に関する業務を行う事務所
何年保管備え置いた日から3年
誰に見せる前払取引の相手方(求められたら)

「エステの3年」はこれです。 カルテの話ではありません。

該当するかどうかの判断

条文の要件は「特定継続的役務提供に係る前払取引」で、金額は5万円超です。回数券やコースを前払いで販売していて、その金額が5万円を超えるものがあるなら、条文上は該当します。

個別の契約形態が該当するかどうかの判断は、弁護士に相談してください。 この記事は制度の説明であり、個別の事案についての結論を出すものではありません(報酬を得て個別の法律事務を扱うことは弁護士法第72条の問題になります)。

出典: 弁護士法第72条(e-Gov法令検索、2026-08-06取得)

ただし、該当するかどうかを自分で確かめる材料は示せます。 次の2つをどちらも満たすかどうかです。

  1. 施術の提供に先立って金銭を受け取っているか
  2. その金額が5万円を超える

前払いを受けずに毎回都度払いなら、45条の話は出てきません。

書類を処分するときに危ないこと

紙で管理している場合、処分のときが最も事故が起きます。 性質の違う書類が同じ箱に入っているためです。

処分の前に、次のように分けてください。

分類処分してよいか
施術記録(自店で決めた年数を過ぎたもの)よい
問診票・同意書(同上)よい
契約書面の控え(契約が終わって数年経過)自店の判断。ただし中途解約の争いが残っていないか確認
貸借対照表等(備え置いてから3年未満)だめ(施行規則第105条第3項)

いちばん危ないのは4番目です。 決算関係の書類は「経理の書類」として別に管理されていることも多いのですが、エステの場合は前払取引の備え置き書類としての意味も重なっています。 経理側で処分の判断をするときに、この観点が抜けることがあります。

そして施術記録の処分方法についても1点。そのまま可燃ごみに出さないでください。 個人情報保護法第23条は、個人データの漏えい・滅失・毀損の防止のために必要かつ適切な措置を講じることを求めています。シュレッダーにかけるか、溶解処理を依頼してください。

電子化すると、保存期間の管理は楽になるのか

なります。ただし楽になるのは施術記録の側だけです。

書類電子化の効果
施術記録大きい。最終来店日で自動的に絞り込める
問診票ある。更新の履歴が残る
契約書面の控え限定的。署名がある紙は紙のまま残ることが多い
貸借対照表等なし(そもそも別で管理する書類)

施術記録が電子化されていると、「契約終了から3年を過ぎた顧客」を機械的に出せます。 紙だと全件を見ることになるので、実際にはやりません。やらないということは、期限を過ぎたデータが残り続けるということです。

当サービスの場合、顧客と予約履歴をCSVで書き出せます。ただし契約書面の管理機能や、期間経過による自動削除の機能はありません。 カルテの年数管理は、最終来店日を見て手作業で判断する形になります。機能の範囲は料金プランに掲載しています。無料の範囲で顧客管理を始める場合の考え方はエステサロンの顧客管理を無料で始めるにまとめています。

まとめ

  • エステのカルテ(施術記録)に法定の作成義務・保存年数は無い。「カルテ5年」は医師法第24条第2項の診療録の話
  • 概要書面・契約書面は交付が義務(特商法第42条第1項・第2項)だが、保存期間の定めは無い
  • ただし解除の起算日が契約書面の受領日なので、控えと交付日の記録は残す
  • 3年という保存期間が定められているのは「業務及び財産の状況を記載した書類」(貸借対照表・損益計算書・事業報告書)。前払取引(5万円超)を行う場合に備え置き、備え置いた日から3年保管(特商法第45条・施行規則第105条第3項)
  • 該当の判断は「先に金銭を受け取っているか」と「5万円を超えるか」の2点。個別の事案は弁護士に相談する
  • カルテの年数は自店で決める。契約終了から3年にすると前払取引の書類と揃えられて管理しやすい
  • 紙の処分は書類の種類ごとに分けてから。備え置いてから3年未満の決算書類を一緒に捨てないこと

よくある質問

エステのカルテには法定の保存期間がありますか?

ありません。カルテ(施術記録)そのものの作成義務も保存年数も、法令には定められていません。3年という保存期間が定められているのは、特定継続的役務提供の前払取引を行う場合に備え置く「業務及び財産の状況を記載した書類」のほうです(特定商取引法第45条・同施行規則第105条第3項)。

その「業務及び財産の状況を記載した書類」とは何ですか?

貸借対照表・損益計算書・事業報告書です(会社以外の場合はこれらに準ずる書類)。事業年度ごとに事業年度経過後3月以内に作成し、契約に関する業務を行う事務所に備え置き、備え置いた日から3年を経過する日までの間保管します。前払取引の相手方から閲覧を求められたら応じる必要があります。

うちは前払いを受けていますが、対象になりますか?

特定継続的役務提供に先立って5万円を超える金銭を受領する取引が対象です(特定商取引法第45条第1項、同施行令第27条)。回数券やコースの前払いで5万円を超えるものを扱っているなら、条文上は該当します。個別の判断は弁護士に相談してください。

概要書面と契約書面は何年保存すればいいですか?

法令に保存期間の定めはありません。定められているのは交付義務です(特定商取引法第42条第1項・第2項)。ただし解除の起算日が契約書面を受領した日であるため、控えと交付日の記録が残っていないと、後から期間の計算ができなくなります。

カルテは何年持てばいいですか?

自店で決めます。エステはコース契約の期間が長く、終了後に再開する方もいるため、契約終了から3年程度を目安にすると実務が回ります。ただし個人情報保護法第22条は、利用する必要がなくなった個人データを遅滞なく消去するよう努めることを求めているため、「永久保存」とは決めないでください。

紙のカルテを処分するとき、注意することはありますか?

契約書面の控えや前払取引の書類と混ざっていないかを確認してください。保存期間の性質が違うものが同じ箱に入っていると、必要な書類まで一緒に処分してしまいます。処分の前に、書類の種類ごとに分けておく必要があります。