前回記事「エステは『特定継続的役務提供』の対象」で解説したとおり、エステの長期コース契約はクーリングオフの対象です。では、クーリングオフ期間(8日間)を過ぎたあとの中途解約では、いくらまで請求できるのでしょうか。この金額にも法律の上限があります。
中途解約でも契約解除自体は認められる
特定商取引法は、クーリングオフ期間経過後も、消費者が将来に向けて契約を解除できると定めています。
消費者は、クーリング・オフ期間の経過後においても、将来に向かって特定継続的役務提供等契約(関連商品の販売契約を含む)を解除(中途解約)することができます。
出典: 消費者庁 特定商取引法ガイド 特定継続的役務提供(2026-07-21取得)
つまり、お客様がいつでも「もうやめたい」と申し出ること自体を、契約で禁止することはできません。
請求できる金額の上限は法律で決まっている
事業者が請求できる金額には、役務提供の開始前か開始後かによって、それぞれ上限が定められています。
A.契約の解除が役務提供開始前である場合 契約の締結及び履行のために通常要する費用の額として役務ごとに政令で定める以下の額。エステティック 2万円
出典: 同上(2026-07-21取得)
施術を1回も受けていない段階での解約であれば、請求できるのは最大2万円までです。すでに施術を受けている場合は、次のとおりです。
B.契約の解除が役務提供開始後である場合(aとbの合計額) a 提供された特定継続的役務の対価に相当する額 b (中略)エステティック 2万円又は契約残額の10%に相当する額のいずれか低い額
出典: 同上(2026-07-21取得)
つまり請求できるのは、「すでに受けた施術分の対価」に加えて、「2万円、または残りの契約金額の10%のうち、低い方」までです。この上限を超える違約金を契約書に定めていても、その部分は法律上無効になります。
自店の解約規定を確認する
コース契約の解約規定を作成する際は、次の点を確認してください。
- 役務提供開始前の解約金上限(2万円)を超えていないか
- 役務提供開始後の解約金上限(2万円または契約残額の10%の低い方+提供済み対価)を超えていないか
- 「一切返金しません」「全額請求します」といった、法定上限を超える特約を設けていないか
これらの上限を超える契約は、法律違反であるだけでなく、お客様との間でトラブルになった際に事業者側が不利な立場に置かれる原因にもなります。
「関連商品」の清算も忘れずに
中途解約の精算では、施術の対価だけでなく、契約時に購入を勧めた化粧品・脱毛器等の扱いも論点になります。国民生活センターは、実際の相談事例をもとに次のように解説しています。
エステティックの契約では、「サービスを利用するために必要である」、「購入しないとそのサービスが利用できない」などの説明により、化粧品や脱毛器の購入を勧められる場合があります。このような商品を「関連商品」といい、特定継続的役務提供の対象業種ごとに、政令で指定されています。関連商品と認められると、中途解約の際に、その商品の購入代金を、サービスの代金とあわせて清算することができます。
出典: 国民生活センター エステの契約をしたが、途中で解約できるか(消費者トラブル解説集)(2026-07-22取得)
コース契約とセットで化粧品等を販売している場合は、施術分の精算だけでなく、この「関連商品」の清算ルールも解約対応の中に組み込んでおく必要があります。契約時点で、どの商品が関連商品に当たるかを整理し、解約規定に明記しておくと、いざという時の対応がスムーズになります。
まとめ
エステのコース契約を中途解約された場合に請求できる金額には、法律で明確な上限が定められています。「全額請求」「返金なし」といった規定は法的に無効になりうるため、自店の解約規定がこの上限内に収まっているかを確認しておくことが重要です。