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美容室のカルテに何を書くか。法定の保管義務は無いので、項目と年数は自店で決める

公開日: 2026-08-06

「美容室 カルテ」で検索すると、その先の関心が アプリ 書き方 テンプレート 何年 無料ダウンロード に分かれます。バラバラに見えますが、根っこは1つです

つまり、カルテに正解の型があると思って探しているということです。

先に結論を書きます。美容室のカルテには、法律で決められた様式も、作成義務も、保管年数の定めもありません。美容師法・同施行規則・衛生管理要領の本文を実際に取得して確認しました(2026-08-06)。

だから探しても「これが正解」というテンプレートは出てきません。項目と年数は自店で決めるものです。この記事は、その決め方を書きます。

この記事でわかること

  • 美容室のカルテに法定の作成義務・保管期間が無いことの根拠(条文を実際に確認した結果)
  • 「カルテは5年保存」という話がどこから来ているのか(美容室には適用されない理由)
  • 保管年数を自店で決めるときの考え方と、個人情報保護法が関わってくる1点
  • 記載項目の一覧(そのまま書き写せる形)
  • 住所を聞くかどうかの判断と、聞く場合の伝え方
  • 紙で回らなくなる具体的な場面
  • カルテなしで運用している場合に何が起きるか

「うちのカルテは雑かもしれない」という不安について

先にこの話をします。検索の入口が 書き方 内容 テンプレート に集まるのは、すでに何かは書いていて、それが足りているのか分からないという段階の検索だと考えられます。

ここで押さえておきたいのは、カルテの良し悪しを判定する外部の基準が存在しないということです。保健所の立入検査で見られるのは施設・設備・器具の衛生状態であって、顧客カルテの中身ではありません(後述のとおり、そもそも要求されていません)。

したがって「雑かどうか」は、次の2つでしか測れません

  1. 前回と同じ仕上がりを再現できるか
  2. 自分以外の人が読んで再現できるか

1だけなら記憶とメモで足りることがあります。2が必要になるのは、スタッフが2人以上いるか、これから増やすときです。自分の不安がどちらの話なのかを分けると、書くべき項目が決まります。

まず事実確認:美容室に「カルテを作れ・保管せよ」という法律は無い

ここは記憶で書くと危ないので、条文を取得して確認しました。

美容師法・美容師法施行規則

美容師法(昭和32年法律第163号)の本文には、「記録」「カルテ」という語が1か所も出てきません。美容師法施行規則(平成10年厚生省令第7号)も同じで、「記録」「保存」「保管」いずれも本文に登場しません。

美容師法が美容所の開設者・美容師に課しているのは、次のような衛生上の措置です。

  • 第8条:皮ふに接する布片・器具を清潔に保つこと、布片は客一人ごとに取り替え、器具は客一人ごとに消毒すること
  • 第13条:美容所を常に清潔に保つこと、消毒設備を設けること、採光・照明・換気を充分にすること

条文に出てくる「名簿」は美容師名簿(厚生労働省が備え、免許に関する事項を登録するもの。第5条)であり、顧客の名簿ではありません。「帳簿」も指定試験機関が試験事務について備えるもの(第4条の11)で、サロンの業務とは関係ありません。

出典: 美容師法美容師法施行規則(e-Gov法令検索、2026-08-06取得)

理容所及び美容所における衛生管理要領

法令ではありませんが、行政指導の基準として実際に使われている文書です(昭和56年6月1日環指第95号、厚生省環境衛生局長通知)。

こちらも本文を取得して確認しましたが、「記録」「カルテ」「保存」「問診」いずれも記載がありません。要領が求めているのは、管理美容師が毎日、従業者の感染症の有無と施設・設備・器具の衛生全般を点検すること等であって、顧客ごとの記録の作成ではありません。

出典: 理容所及び美容所における衛生管理要領について(厚生労働省、2026-08-06取得)

参考:ネイルサロンには問診票の記載がある

対比として知っておくと理解が早いので触れておきます。ネイルサロンについては別に指針があり、そこには次の記載があります。「確認は、問診票等を用いて確実に行うこと」という一文です

そして同じ通知の中で、理容所・美容所はこの指針の対象ではないことが明示されています(理容師法・美容師法と衛生管理要領で指導するため)。

出典: ネイルサロンにおける衛生管理に関する指針について(厚生労働省、平成22年9月15日健発0915第4号、2026-08-06取得)

つまり、美容室とネイルサロンでは行政文書のレベルで扱いが違います。ネイル併設のサロンは、ネイル部分について問診票の話が別途あると理解してください(ネイルサロンのカルテと同意書で扱っています)。

「カルテは5年保存」はどこから来た話か

検索していると必ず出てくるのがこれです。出どころは医師法です。

前項の診療録であつて、病院又は診療所に勤務する医師のした診療に関するものは、その病院又は診療所の管理者において、その他の診療に関するものは、その医師において、五年間これを保存しなければならない。

出典: 医師法第24条第2項(e-Gov法令検索、2026-08-06取得)

条文が対象にしているのは医師が作成した診療録です。美容室の施術記録は診療録ではなく、美容師は医師ではありません。この5年は美容室に適用されません。

ここを混同すると「5年経ったから捨てなければいけない」「5年は絶対に持たないといけない」という、どちらも根拠のない判断をしてしまいます。美容室の年数は、法律ではなく自店の必要性で決まります。

では何年持つか

法定義務が無いなら「ずっと持っておけばいい」と考えたくなりますが、そうとも言えません。個人情報保護法に次の規定があります。

個人情報取扱事業者は、利用目的の達成に必要な範囲内において、個人データを正確かつ最新の内容に保つとともに、利用する必要がなくなったときは、当該個人データを遅滞なく消去するよう努めなければならない。

出典: 個人情報の保護に関する法律第22条(e-Gov法令検索、2026-08-06取得)

条文は「努めなければならない」という努力義務です。違反したら即罰則という規定ではありません。ただし、永久保存と決めることは、この条文の考え方と噛み合いません。持ち続ける限り、漏えいしたときに漏れるデータでもあります。

決め方は「来店周期の何回分か」

実務的には、次の順で決めます。

  1. 自店の平均来店周期を出す(美容室なら2〜3か月が多い区分です)
  2. 何回分を遡れれば施術に足りるかを決める — 薬剤の反応やカラーの履歴は、直近数回あれば足りることが多い
  3. 周期 × 回数 に、間隔が空きがちなお客様の分を足す

たとえば周期3か月で6回分を遡りたいなら1年半、余裕を見て2〜3年、という決め方です。「最終来店から3年」のように起点を最終来店日にすると、常連のデータは消えず、来なくなった方のデータだけが順に消えていきます。

決めたら、それを書いておく

年数を決めたら、利用目的とあわせて文章にしておきます。個人情報保護法は次を求めています。

  • 第17条:利用目的をできる限り特定すること
  • 第21条第2項:本人が直接書面に記入する形で個人情報を取得する場合、あらかじめ利用目的を明示すること(カルテ用紙に記入してもらう場合はここに当たります)
  • 第32条:保有個人データの利用目的や請求手続を本人の知り得る状態に置くこと

「カルテ用紙の下に小さく1段落」で足ります。凝ったものは要りません。書いておくと、削除を求められたときに「うちは最終来店から3年で消しています」と即答できます。

住所を聞くかどうか

美容室 カルテ 住所 が派生に出てきます。判断はシンプルで、使う予定があるなら聞き、無いなら聞かないです。

住所を使う場面は実際には限られます。

用途住所が必要か
DM・年賀状の郵送必要
商圏の把握(どのエリアから来ているか)市区町村までで足りる
予約確認・リマインド不要(メール・電話で足りる)
何かあったときの連絡不要(電話で足りる)

「一応もらっておく」が最もよくない状態です。使わないデータを持つと、利用目的を説明できず、漏えいしたときに漏れる情報が増えるだけです。

聞く場合は、用途をその場で書いておくのが確実です。「ご案内のハガキをお送りするため」と1行添えるだけで、第21条第2項の明示になります。商圏把握だけが目的なら、番地まで書かせず市区町村の欄にするという選択もできます。

記載項目の一覧

ここが 書き方 内容 テンプレート 無料ダウンロード に対する回答です。

ダウンロードできるファイルは用意していません。 代わりに、そのまま書き写せる形で項目を並べます。紙に線を引くときも、表計算に列を作るときも、この順で足ります。

1. 基本情報(初回だけ書く)

項目目的必須か
氏名(フリガナ)呼びかけ・同姓の区別必須
電話番号当日の連絡必須
メールアドレス予約確認・リマインドほぼ必須
生年月日または年代髪質の変化の見立て任意
住所郵送物を送る場合のみ任意
初回来店日付き合いの長さ必須
来店きっかけ集客の効果測定推奨

来店きっかけを1行入れておくと、後で効果測定ができます。「紹介」「Instagram」「通りがかり」「ポータルサイト」程度の粗さで十分です。

2. 髪と頭皮の状態(初回に書き、変化したら追記)

項目書く内容の例
髪質・量・クセ硬さ/太さ/量/うねりの出方
頭皮の状態乾燥気味/脂性/敏感
既往の施術履歴他店での縮毛矯正・ブリーチの有無と時期
ホームケア使っているシャンプー・アイロンの頻度
申告された体質・治療中の事項お客様が言われたことをそのまま

他店での履歴は、聞けるうちに聞いておく価値が最も高い項目です。ブリーチや縮毛矯正の履歴は薬剤選定を左右しますが、初回の時点でしか聞くタイミングがありません。

最後の行の扱いには注意が必要です。お客様が申告した診断名を書くと、それは病歴として要配慮個人情報になりえます。一方、施術者の見立て(頭皮が乾燥気味など)は該当しません。この判定は条文とガイドラインをもとに整体院の顧客管理をExcelから移行する手順で詳しく扱っているので、アレルギー欄・治療中の欄を作る前に一度読んでおいてください。手段ごとの比較は美容室の顧客管理を無料で始めるにまとめています。

3. 施術記録(来店ごとに書く)

項目書く内容の例
日付・担当者誰がやったか
メニューカット/カラー/パーマ等
薬剤とカラー配合品名・番号・比率・放置時間
仕上がりの評価明るくなりすぎ/もう1トーン暗く
使用量短毛1本/ロング2本 など
金額客単価の集計に使う

薬剤とカラー配合は、書いておかないと再現できない唯一の項目です。ほかは記憶で補えても、配合比率は補えません。番号と比率と放置時間の3つを必ず揃えてください。この3つが揃っていれば、担当が替わっても同じ色が出せます。

4. 好みとNG(気づいたときに追記)

項目書く内容の例
仕上がりの好み前髪は目にかかるくらい/軽くしすぎない
会話の好み静かに過ごしたい/おすすめを聞きたい
NG特定の香り/頭を強く触られるのが苦手
次回の予定結婚式が3か月後 など

この4番目が、指名につながる差になります。1〜3番は技術の記録ですが、4番は「覚えていてくれた」と伝わる部分です。

ただし書き方には配慮が必要です。お客様が読む可能性を前提にしてください。個人情報保護法には本人からの開示請求の仕組みがあり、カルテもその対象になりえます。主観的な人物評は書かない、事実と要望だけを書く、が安全です。

5. 来店周期の管理欄

項目使い方
前回来店日間隔の把握
平均来店間隔案内の時期を決める
次回来店予定帰り際に決まったら書く

紙のカルテだと、この欄が最も機能しません。「3か月来ていない人」を出そうとすると全部めくることになるためです。ここは後述の話につながります。

表計算で作る場合の列設計

紙ではなく表計算で作るなら、1枚のシートに全部を横に並べないでください。来店ごとの記録を右に足していく形(施術1、施術2、施術3…)にすると、抽出も集計もできなくなります。

2枚に分けます。

シート1行が表すもの主な列
顧客マスタお客様1名顧客ID・氏名・連絡先・髪質・既往の施術履歴・好み・NG
施術履歴来店1回顧客ID・日付・担当・メニュー・薬剤と配合・金額・所感

2枚を顧客IDで紐づけます。 この形にしておけば、施術履歴の側を集計するだけで最終来店日・来店回数・客単価が出せます。1枚に横並びにしてしまうと、同じことが原理的にできません。

顧客IDは連番で構いません。 氏名を鍵にすると同姓同名と改姓で崩れます。

この構造で運用していると、後からサービスに移すときの取り込みも通りやすくなります。逆に横並びのシートは、移行前に必ず作り直すことになります。

初回に聞く順番

項目が決まっても、初回に全部を聞くと問診のようになります。順番を決めておくと自然に収まります。

  1. 記入してもらう(氏名・連絡先・住所を書く場合はここ。利用目的を用紙に1行)
  2. 今日どうしたいかを聞く(お客様がいちばん話したいのはここです)
  3. その過程で髪の履歴を聞く(「前回はどこで染められましたか」は要望の話の流れで自然に入ります)
  4. 施術中に体質・治療中の事項を確認する
  5. 仕上げながら好みとNGを聞く

履歴と体質を1番目に置かないでください。 来店した目的の話より先に既往を聞かれると、お客様の側からは調査に見えます。3と4の位置に置けば会話のまま聞けます。

「再現できる書き方」と「できない書き方」

項目を並べただけでは足りない部分があるので、施術記録の書き方だけ具体例を出します。差が出るのは薬剤の行です。

書き方再現できるか
「いつもの色」不可。何もわからない
「アッシュ系で暗め」不可。担当が替わると別の色になる
「A社 8-AB : 6-NB = 1 : 1、OX3% 、20分」可能

3つ目まで書けていれば、担当が替わっても同じ色が出ます。書くのに10秒しかかかりません。

同じ考え方で、次の3つは数値か固有名で書いてください。

  1. 薬剤 — メーカー名と品番。「アッシュ」のような色味の言葉だけにしない
  2. 比率と量 — 混合比、使用量(短毛1本・ロング2本など)
  3. 時間 — 放置時間。仕上がりの評価とセットで意味を持つ

そして仕上がりの評価は、次回どうするかまで書きます。「明るくなりすぎた」で止めず「次回は1トーン暗く」まで書くと、次の担当がそのまま使えます。

スタッフ間で表記を揃える

複数人で書くなら、表記のルールを1枚決めておくほうが後で楽になります。決めるのは次の3つで足ります。

  • メーカー名の略称(同じメーカーを人によって違う書き方にしない)
  • 時間の単位(「20」なのか「20分」なのか)
  • 評価の言葉(「明るい/暗い」で統一するか、トーン数で書くか)

揃っていないと、検索しても出てこないという形で効きます。「同じ薬剤を使った人」を探せるかどうかが、表記の統一で決まります。

「カルテなし」で運用している場合

美容室 カルテなし も派生に出ています。法律上は問題ありません。 ただし次の場面で確実に困ります。

  1. 前回と同じ色を出せない — 記憶が曖昧なとき、配合の再現ができない
  2. 指名替え・退職の引き継ぎができない — 担当者の頭の中にしか無い情報は引き継げない
  3. クレームのときに何をしたか説明できない — 薬剤の記録が無いと、経過の説明ができない
  4. 来店周期が分からない — 誰が離れかけているのかが見えない

1人で経営していて顧客数が数十名なら、記憶で回ります。 これは事実です。カルテを作る意味が出てくるのは、次のどれかに当たったときです。

  • スタッフを雇った(または雇う予定がある)
  • 顧客数が100名を超えて、顔と施術内容が結びつかなくなってきた
  • カラーやパーマの比率が上がってきた(配合の再現が必要な施術が増えた)

該当しないなら、無理に作り込まなくてよいというのが正直な結論です。作るなら前述の3(施術記録)から始めてください。それだけで再現性は上がります。

紙で回らなくなる場面

アプリ が同じクエリの中に並んでいるのは、紙で始めた人が限界に当たっているということです。どこで当たるのかを具体的に挙げます。

1. 探す時間が施術に食い込む

50名くらいまでは五十音順のファイルで足ります。200名を超えると、探す時間が読めなくなります。同姓が複数いる、旧姓のまま挟まっている、去年のファイルに紛れている、といった事情が重なるためです。

2. 2人が同時に見られない

紙は1冊しかありません。アシスタントが薬剤を準備しながら、担当が仕上がりの好みを確認するという並行作業ができません。スタッフが増えたときに最初に詰まるのがここです。

3. 抽出ができない

「3か月来ていない人に案内を送る」を紙でやると、全部めくることになります。やらなくなるだけです。 抽出できないことの本当の損失は、作業時間ではなく打ち手が発想されなくなることです。

4. 紛失と災害で消える

紙は複製がありません。水濡れ・火災・置き忘れで、そのお客様の履歴は完全に失われます。バックアップの取れない媒体であるという点は、意外に見落とされます。

5. 複数店舗で共有できない

2店舗目を出すと物理的に共有できません。「あちらの店で染めた」履歴が見えないまま施術することになります。

逆に言えば、この5つに当たっていないなら紙で構いません。 1人でやっていて顧客数が抑えられているなら、紙のほうが速いことも実際にあります。

手段の比較(紙・表計算・アプリのどれを選ぶか)は美容室の顧客管理を無料で始めるで扱っています。この記事は「何を書くか」に絞りました。

紙からアプリに移すときの順番

移すと決めた場合、全部を一度に移さないでください。過去のカルテを全件入力するのは、ほぼ確実に途中で止まります。

現実的な順番は次のとおりです。

  1. 今日から新規のお客様だけをアプリに入れる
  2. 来店したお客様のカルテを、その場で1件ずつ移す(来た人から自然に移行が進みます)
  3. 1年経った時点で、その間に来ていない人の紙は残す(もともと来ていないので急ぎません)

この方法だと、入力作業のための時間を別に取る必要がありません。来店1件ごとに数分の入力が乗るだけです。1年で、実際に来ているお客様は全員移り終わります。

移行の一般的な段取り(電話番号の先頭の0が落ちる、日付形式が混在する等の壊れ方)は整体院の顧客管理をExcelから移行する手順に整理しています。表計算から移す場合はそちらを先に読んでください。

電子化したときに新しく発生する義務

紙をやめると個人情報保護法の話が消える、ということはありません。むしろ考えることが増えます。

  • 外部サービスに預けることは、個人データの取扱いの委託にあたります(法第25条の委託先の監督)。どの事業者に預けているかを把握しておく必要があります
  • スタッフごとにアカウントを分ける — 共有アカウントだと、誰が見たのか分からず、退職時に締められません
  • 書き出せることを確認しておく — 移行先を将来また変える可能性があります。CSVで出せないサービスに入れると、次に動けません

3つ目は、選ぶ段階で確認しておくべき項目です。契約前に「顧客データをCSVで書き出せますか」と聞いてください。

なお、紙でも表計算でも外部サービスでも、安全管理措置(法第23条)と従業者の監督(法第24条)は共通してかかります。紙なら鍵のかかる場所に置く、表計算ならパスワードとバックアップ、サービスならアカウント分離、というだけの違いです。

お客様から開示を求められたら

めったに起きませんが、起きたときに慌てるので触れておきます。個人情報保護法には、本人が自分のデータの開示を請求できる仕組みがあります(法第33条)。利用停止や消去を請求できる場合もあります(法第35条)。

美容室のカルテもこの対象になりえます。そのときに読まれる前提で書いておくのが、唯一の備えです。

具体的には次の2点です。

  1. 人物評を書かない — 「機嫌が悪い」「話が長い」等は、読まれたときに関係が壊れます。要望と事実だけを書く
  2. 事実と推測を分けて書く — 「アトピーと言われた」(お客様の申告)と「頭皮が乾燥気味」(施術者の見立て)は別物です。前者は要配慮個人情報になりえます

「読まれても困らないことだけを書く」というルールにしておくと、この話は自動的に解決します。そして読まれても困らない記録のほうが、引き継ぎにも使えます。

当サービスの場合は、顧客・予約履歴をCSVで書き出せます。ただし薬剤の配合を入れる専用の欄はなく、メモ欄に書く形になります。配合を項目ごとに分けて管理したい場合は、その要件を満たすものを選んでください。機能の範囲は料金プランに掲載しています。

まとめ

  • 美容師法・同施行規則・衛生管理要領を確認した結果、美容室のカルテに法定の作成義務・保管年数の定めは無い(2026-08-06に本文を取得)
  • 「カルテ5年」は医師法第24条第2項の診療録の話で、美容室には適用されない
  • 年数は自店で決める。ただし個人情報保護法第22条に利用する必要がなくなったら消去するよう努める規定があるため、「永久保存」とは決めない
  • 決め方は来店周期 × 遡りたい回数。起点を最終来店日にすると、常連は残り、離れた人から順に消える
  • 住所は使う予定があるなら聞き、無いなら聞かない。「一応もらっておく」が最もよくない
  • 書くべき項目は5つに分かれる。再現に不可欠なのは薬剤の番号・比率・放置時間の3つ
  • カルテなしでも法律上は問題ない。作る意味が出るのはスタッフを雇ったときと顧客数が100名を超えたとき
  • 紙をやめる判断は「探す時間が施術に食い込むか」「2人が同時に見る必要があるか」で決める
  • 移すときは全件移行しない。来店したお客様から1件ずつ移せば1年で終わる

よくある質問

美容室のカルテには法律で決まった保管期間がありますか?

ありません。美容師法・美容師法施行規則・理容所及び美容所における衛生管理要領を確認しましたが、顧客カルテの作成や保管を求める規定は見つかりませんでした(いずれも2026-08-06に本文を取得して確認)。「カルテは5年保存」は医師法第24条第2項の診療録の話で、美容室には適用されません。

では何年持てばよいのですか?

自店で決めます。ただし個人情報保護法第22条に、利用する必要がなくなった個人データは遅滞なく消去するよう努める、という規定があります。「永久保存」と決めるのではなく、来店周期の何回分を遡れれば足りるかで期間を決めて、その期間を利用目的とあわせて書いておくのが実務的です。

住所は聞いたほうがいいですか?

使う予定があるなら聞き、無いなら聞かない、が原則です。個人情報保護法第17条は利用目的をできる限り特定することを求めており、第21条第2項は本人が直接書面に記入する場合は利用目的をあらかじめ明示することを求めています。DMを送らないのに住所欄があると、目的が説明できません。

アレルギー欄があると要配慮個人情報になりますか?

書き方によります。お客様が申告した診断名(アトピー性皮膚炎など)を書けば病歴として該当しえます。一方、施術者の見立て(頭皮が乾燥気味など)は該当しません。判定の詳細は整体院の記事で条文とガイドラインをもとに扱っているので、そちらを参照してください。

カルテなしで運用してもいいですか?

法律上は問題ありません。ただし薬剤やカラー配合の記録が無いと、前回と同じ仕上がりを再現できず、指名替えのときに引き継げません。1人で経営して顧客数が数十名なら記憶で回ることもありますが、スタッフが増えた時点で成立しなくなります。

紙のカルテをやめるべきタイミングはいつですか?

「探す時間が施術に食い込み始めたとき」と「2人目のスタッフが同じカルテを見る必要が出たとき」です。紙は1冊しかないため、同時に2人が参照できません。複数店舗になると物理的に共有できなくなります。