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ネイルサロンのカルテと同意書は別物。指針が求めているのは問診票で、同意書は「望ましい」

公開日: 2026-08-06

「ネイルサロン カルテ」で検索したときの派生語には、美容室では出てこないものが1つ混ざっています。同意書 です。

これは偶然ではありません。ネイルにはジェルアレルギー・グリーンネイル・皮膚トラブルという固有のリスクがあり、施術の記録とは別に、事前にリスクを説明した記録が必要になるからです。

そして検索の場では、この2つがしばしば混ざっています。カルテと同意書は目的が違い、取るタイミングも違い、使う場面も違います。 この記事はその整理から始めます。

この記事でわかること

  • カルテと同意書の違い(何のために取るのか、いつ取るのか、いつ使うのか)
  • 厚生労働省のネイルサロン衛生管理指針が実際に何を求めているか(問診票と同意書で書き方が違う
  • 同意書が法律上の義務ではないこと、それでも取る理由
  • 問診票の記載項目(指針が挙げている4項目+ネイル固有の項目)
  • 同意書の記載項目
  • 施術記録(カルテ)にネイル固有で必要な項目
  • トラブルが起きたときに、これらの書面が何に使えるか

「同意書まで取っている店は少ないのでは」という感覚について

先にここに触れます。実際、取っていないサロンは珍しくありません。取っていないことが直ちに違法になるわけでもありません(後述します)。

一方で、ネイルサロン カルテ 同意書 という検索が成立している以上、必要かどうか判断がついていない人が一定数いるということでもあります。

判断の材料は2つです。

  1. 法的にどう位置づけられているのか(義務なのか、推奨なのか)
  2. 取っていないと、どの場面で困るのか

1は一次資料で確定できます。2は「困る場面」を具体的に想像できるかどうかの話です。両方をこの記事で扱います。

カルテと同意書は別物

まず整理します。

カルテ(施術記録)同意書
目的次回に同じ施術を再現するリスクを説明したことを記録する
取るタイミング来店ごとに書き足す初回に1回(内容が変われば取り直す)
使う場面毎回の施術・引き継ぎトラブルが起きたとき
誰のために主にサロン側双方

混ぜてはいけない理由は、使う場面が違うからです。 トラブルが起きたときに探すのは同意書ですが、それが3年分の施術メモの間に挟まっていると出てきません。同意書は顧客ごとに1か所にまとめておく必要があります。

そして、この2つの間にもう1枚あります。問診票です。

問診票同意書
内容お客様の状態を聞き取るサロン側が説明した内容
方向お客様 → サロンサロン → お客様
指針の書き方「確実に行うこと」「望ましい」

この最後の行が、この記事の核心です。指針は問診票と同意書を同じ強さで書いていません。

一次資料で確認したこと

根拠になっている文書は1つです。厚生労働省の「ネイルサロンにおける衛生管理に関する指針」(平成22年9月15日健発0915第4号)です。本文を取得して確認しました(2026-08-06)。

問診票について書かれていること

指針の第7(自主的管理体制)の3に、次のようにあります。

従業者は施術を行うに当たり、事前に感染症及び皮膚疾患等の治療中か、アレルギー体質か、薬を服用しているか、敏感肌であるか、その他施術を受ける障害のないことを、客に確認すること。なお、確認は、問診票等を用いて確実に行うこと。

「確実に行うこと」という書き方です。 そして確認すべき事項が4つ列挙されています。この4つが問診票の骨格になります。

同意書について書かれていること

同じ第7の4と5に、次のようにあります。

4 従業者は、施術後のケアについて十分な説明をすること。 5 従業者は、施術に伴う健康被害発生のリスク等について、施術前に客に十分な説明を行うこと。説明、承諾は書面で行うことが望ましい。

説明そのものは「行うこと」ですが、書面にするかどうかは「望ましい」です。 つまり、口頭で説明していれば指針に反しているわけではありません。書面はあくまで推奨です。

この指針の法的な位置づけ

通知本文に明記されています。

なお、この通知は、地方自治法(昭和22年法律第67号)第245条の4第1項に規定する技術的な助言に当たるものである。

法令ではありません。 罰則もありません。ただし同じ通知の「記」に、次の運用が書かれています。

ネイルサロンにおいて健康被害が発生し、保健所等に相談がよせられた際には、地域保健法(昭和22年法律第101号)に基づき、本指針を用いて、地域の実情に応じ、その施設に対し指導又は助言を行うこと。

つまり、健康被害が発生して保健所に相談が入った場面で、この指針が判断の物差しとして使われます。義務ではないが、問題が起きたときに参照される文書、という位置づけです。

なぜこの指針ができたのか

背景も通知に書かれています。平成20年10月に、つけ爪に関する健康被害について国民生活センターから情報提供があったことを受け、実態調査と検討会を経て定められたものです。

もともと健康被害から出発した文書であるということです。だから問診票とリスク説明が入っています。

出典: ネイルサロンにおける衛生管理に関する指針について(厚生労働省、平成22年9月15日健発0915第4号、2026-08-06取得)

衛生管理の具体的な措置(器具の消毒方法や濃度など)はネイルサロンの衛生管理指針への対応で扱っています。この記事は書面の話に絞ります。

美容室との違い

同じ通知の「記」の2に、次のようにあります。

理容所・美容所については、理容師法、美容師法によって衛生水準の確保が義務付けられるとともに、理容所及び美容所における衛生管理要領によって指導を行うことから、本指針の対象とするものではないこと。

美容所はこの指針の対象外です。 そして美容師法・同施行規則・衛生管理要領には、問診票にあたる記載がありません(美容室のカルテに何を書くかで条文を確認した結果を載せています)。

ネイルだけに問診票の記載があるのは、この構造によるものです。ネイル併設の美容室は、美容所としては指針の対象外ですが、ネイル施術のリスク自体は消えません。書面の運用は指針を参考にするのが実務的です。

問診票に書く項目

指針が挙げている4項目を骨格にして、ネイル固有の項目を足します。

指針が挙げている4項目

項目聞き方の例
感染症・皮膚疾患等の治療中か現在治療中の皮膚の病気はありますか
アレルギー体質か金属・化粧品・薬でアレルギーが出たことは
薬を服用しているか服用中のお薬はありますか
敏感肌か肌が弱いと感じることはありますか

「その他施術を受ける障害のないこと」も指針の文言に入っています。 自由記述欄を1つ置いておけば足ります。

ネイル固有に足す項目

項目なぜ聞くか
過去のジェル・アクリルでのトラブル再発しやすい。使用製品の選定に直結する
妊娠中・授乳中か換気や施術時間の配慮の判断に使う
自爪の状態の自己申告二枚爪・割れやすい・薄いなど
爪を使う仕事・趣味水仕事・楽器・スポーツで持ちが変わる
他店でのオフ・長さ出しの履歴何が乗っているか分からないと外せない

最後の行が実務では最も効きます。 他店で入れたスカルプやハードジェルは、外し方を間違えると自爪を傷めます。施術前に何が乗っているかを確定させるのは、リスク管理そのものです。

聞いた内容の扱い

問診票には、お客様が申告した診断名が書かれることがあります。「アトピー性皮膚炎の治療中」のような記載です。

この場合、その情報は要配慮個人情報として扱う必要が出てきます。 一方、施術者の見立て(爪が薄いように見える等)は該当しません。この判定は条文とガイドラインをもとに整体院の顧客管理をExcelから移行する手順で詳しく扱っているので、問診票を作る前に一度確認してください。

同意書に書く項目

指針の第7の4と5が求めているのは、施術後のケアの説明健康被害のリスクの説明です。同意書はこの2つを書面にしたものになります。

1. リスクの説明

項目書く内容
アレルギー反応の可能性未硬化ジェルの接触でかゆみ・赤みが出ることがある
グリーンネイル浮いた部分に水分が入ると変色することがある
自爪への影響オフやファイリングで一時的に薄くなることがある
痛み・違和感長さ出しで爪先に負荷がかかることがある
皮膚のトラブル甘皮周りの処理で赤みが出ることがある

症状が出たときにどうしてほしいかを1行入れてください。 「無理に自分で外さず、まず連絡してください」まで書いておくと、実際に連絡が来ます。自分で剥がされてから相談されるのが最も悪い展開です。

2. 施術後のケア

項目書く内容
浮いたときの対応自分で剥がさない・連絡する
水仕事手袋の使用
持ちの目安3〜4週間で付け替え
リペアの扱い何日以内なら無償か(自店の方針)

最後の行は同意書に書いておくと、後で揉めません。 「1週間以内の1本は無償」のような線を、口頭ではなく紙にしておくという意味です。

3. 同意の記録として必要なもの

  • 日付
  • お客様の署名(または記名)
  • 説明した担当者名

署名は必須ではありませんが、日付と担当者名は入れてください。 「いつ・誰が説明したか」が分からない書面は、後から使えません。

同意書は何をしてくれないのか

ここは正直に書きます。同意書があっても、責任を負わない状態にはなりません。 同意書の役割は「説明した」という事実の記録であって、責任を免れる書面ではありません。

トラブルが起きたときにこの書面が果たすのは、事実関係を確認できる状態を作ることだけです。それでも十分に価値があります。何も残っていないと、説明したかどうかから争いになるためです。

個別の事案について責任の所在がどうなるかは、弁護士に相談してください。 この記事は制度と実務の説明であり、個別の相談への回答ではありません。

施術記録(カルテ)に必要な項目

同意書と問診票は初回のものです。来店ごとに書くのが施術記録です。 ネイル固有の項目で作ります。

1. 自爪の状態(来店ごとに更新)

項目書く内容の例
爪の形・長さスクエア/オーバル、フリーエッジの長さ
厚み・硬さ薄い/二枚爪になりやすい
甘皮の状態乾燥・ささくれの有無
前回からの変化浮きが出た指、欠けた指

「前回からの変化」を書くと、次回の施術方法が変わります。 特定の指だけ毎回浮くなら、その指の下処理を変える判断ができます。

2. 使用した製品(最重要)

項目書く内容の例
ベースメーカー・品名
カラーメーカー・カラー番号・重ね塗りの回数
トップメーカー・品名
長さ出し方法(スカルプ/フォーム/チップ)と素材
硬化時間ライトの種類と秒数

ここが記録の中心です。 カラー番号が残っていないと「前回と同じ色で」に応えられません。そしてアレルギー反応が出たときに、どの製品が原因候補かを絞れるのはこの記録だけです。

メーカー名は略さず統一してください。 人によって書き方が違うと、後から「同じ製品を使った人」を探せなくなります。

3. デザインと施術時間

項目書く内容の例
デザインアート内容・使用パーツ
写真撮ったかどうか、保存場所
実際の施術時間開始・終了時刻
オフの有無と種類自店/他店、ジェル/スカルプ

実際の施術時間を書くのは、予約枠の精度を上げるためです。 ネイルは同じメニュー名でもデザインで時間が変わります。この記録が溜まると、そのお客様の枠を何分で取るべきかが分かります。この考え方はネイルサロンの予約時間の管理で詳しく扱っています。

写真を撮る場合は、保存場所を決めてから撮ってください。 スマホのカメラロールに入れたままだと、端末を失くしたときにそれがそのまま漏えいになります。

4. 次回に向けたメモ

項目書く内容の例
次回の希望「次はもう少し短く」
予定結婚式・旅行の時期
付け替え予定日3〜4週後の目安

付け替え予定日を書いておくと、案内の時期が決まります。 ネイルは来店周期が明確な業種なので、この欄が最も機能します。

トラブルが起きたときに何が使えるか

書面を3種類作る意味を、起きたときの流れで示します。

症状の相談が入った場合

  1. 問診票を見る — 事前に申告されていた体質・治療中の事項を確認する
  2. 施術記録を見る — その日に使った製品を特定する
  3. 同意書を見る — どのリスクを説明していたかを確認する

この3つが揃っていれば、何が起きたのかを事実で追えます。 揃っていないと、記憶で話すことになります。

そして最初にすべきことは、記録を確認することではなく、症状の状態を確認して必要なら医療機関の受診を案内することです。 皮膚の症状はサロンで判断するものではありません。

紙で持つか、アプリで持つか

3種類の書面で、性質が違います。

書面紙が向くか
同意書(署名あり)紙でよい。1回取って保管するだけ
問診票どちらでも。内容が変わったら更新が必要
施術記録検索と集計が要るので、紙は苦しい

同意書だけは紙のまま保管しても回ります。 更新が発生しないためです。

施術記録は紙だと厳しくなります。 「前回と同じ色」に応えるには過去の記録を探す必要があり、来店のたびに発生します。探す時間が施術に食い込み始めたら、そこが切り替えの判断点です。

保管期間についても触れておきます。ネイルサロンのカルテにも、法定の保管年数はありません。 ただし個人情報保護法第22条に、利用する必要がなくなった個人データは遅滞なく消去するよう努める、という規定があります(個人情報の保護に関する法律、e-Gov法令検索、2026-08-06取得)。

ネイルは来店周期が3〜4週と短いため、「最終来店から2年」程度でも十分に遡れます。 起点を最終来店日にすれば、通っているお客様の記録は残り、来なくなった方の記録から順に消えていきます。

顧客管理の手段をどう選ぶか(無料の範囲で何ができるか)はネイルサロンの予約と顧客管理にまとめています。

「無料のカルテアプリ」を探している場合

無料アプリ が派生に出ています。無料の範囲で始めるのは十分に現実的ですが、選ぶ前に確認しておくべき点が3つあります。

1. 書き出せるか

無料で始めて合わなかったときに、データを持って出られるかどうかです。 CSVで書き出せないサービスに1年分の記録を入れると、次に動くときに手入力で移すことになります。

契約前(無料登録の前)に確認してください。 「エクスポート」「CSV」で検索して出てこないなら、問い合わせて聞いたほうが早いです。

2. 写真をどう扱うか

ネイルはデザインの写真が記録の一部になります。写真を置ける機能があるか、無い場合はどこに置くのかを決めてから運用を始めてください。

無いまま始めると、結果としてスマホのカメラロールに溜まります。カメラロールは、他の写真と混在し、端末の紛失がそのまま漏えいになる置き場所です。 少なくとも専用のフォルダに分け、端末側にロックをかけてください。

3. 無料の上限がどこにあるか

無料プランには通常どこかに上限があります。「顧客数」「月間予約数」「スタッフ数」のどれで区切られているかを見てください。 顧客数で区切られているものは、続けているうちに必ず当たります。

当サービスの場合、無料プランの上限は月間予約30件・顧客20名・メニュー5件・スタッフ1名です。1人のサロンで始める分には足りますが、顧客20名は通っているお客様が増えると当たります。 上限を超える場合はBasicプラン(月額2,980円・年額29,800円)になります。金額と含まれる範囲は料金プランに掲載しています。

そして正直に書いておくと、当サービスに問診票や同意書の専用機能はありません。 顧客ごとのメモ欄に記録する形になります。同意書の署名を紙で取って別に保管し、記録側はメモ欄で運用する、という組み合わせが現実的です。専用の項目で管理したい場合は、その要件を満たすものを選んでください。

問診票と同意書を更新するタイミング

初回に取ったあと、そのままにしがちなのがこの2つです。更新が必要になる場面は決まっています。

場面更新するもの
使用する製品ブランドを変えた同意書(リスクの説明内容が変わる)
メニューに長さ出しを追加した同意書
お客様から体調・服薬の変化を聞いた問診票
1年以上来店が空いた問診票(体質と服薬は変わります)

最後の行が抜けやすいところです。 久しぶりの来店は「常連さん」として扱いがちですが、1年の間に治療中の疾患や服薬が変わっていることがあります。 「前回から変わったことはありますか」と一言聞くだけで足ります。

まとめ

  • カルテ・問診票・同意書は別物。目的と取るタイミングと使う場面が違う
  • 厚生労働省のネイルサロン衛生管理指針は、問診票について「確実に行うこと」、書面での承諾について「望ましい」と書き分けている(第7の3・5)
  • 指針は地方自治法第245条の4第1項の技術的な助言であり法令ではない。ただし健康被害の相談が保健所に入った場面で参照される
  • 美容所はこの指針の対象外(通知の記2に明記)。ネイルだけに問診票の記載があるのはこの構造による
  • 問診票の骨格は指針が挙げる4項目。他店でのオフ・長さ出しの履歴を足すのが実務では最も効く
  • 同意書はリスク説明と施術後のケアを書面化したもの。責任を免れる書面ではなく、事実を追えるようにする書面
  • 施術記録の中心は使用した製品(ベース・カラー番号・トップ・長さ出しの方法)。アレルギーの原因候補を絞れるのはこの記録だけ
  • 保管年数の法定義務は無い。最終来店から2年を起点にすれば運用が回る

よくある質問

ネイルサロンの同意書は法律で義務ですか?

法律上の義務ではありません。根拠になっているのは厚生労働省の「ネイルサロンにおける衛生管理に関する指針」で、そこには「説明、承諾は書面で行うことが望ましい」と書かれています。通知本文にこれが地方自治法第245条の4第1項の技術的な助言であると明記されており、法令ではありません。

では問診票はどうですか?

同じ指針の第7の3で、施術前に感染症・皮膚疾患等の治療中か、アレルギー体質か、薬を服用しているか、敏感肌かを客に確認することとされ、さらに「確認は、問診票等を用いて確実に行うこと」と書かれています。同意書より踏み込んだ書き方になっているのはこちらです。

カルテと同意書は1枚にまとめてもいいですか?

分けたほうが実務が回ります。同意書は初回に1回取るもので内容が変わりません。カルテは来店ごとに書き足していくものです。1枚にすると、同意の記録が施術メモに埋もれて後から探せなくなります。

ネイル併設の美容室はどちらの基準になりますか?

指針の通知本文に、理容所・美容所は理容師法・美容師法と衛生管理要領で指導するため本指針の対象ではないと明記されています。ただしネイル施術に固有のリスク説明が消えるわけではないため、ネイル部分については指針の内容を参考にするのが実務的です。

グリーンネイルが出たとき、同意書があれば責任を負わずに済みますか?

そうはなりません。同意書は「説明した」という記録であって、責任を免れる書面ではありません。役割は、トラブルが起きたときに事実関係を確認できる状態を作ることです。個別の事案の責任の所在については弁護士に相談してください。

自爪の状態は写真で記録してもいいですか?

記録としては有効です。ただし写真も個人情報として扱う必要があり、保存場所と保存期間、消す手順を決めておく必要があります。スマホのカメラロールに入れたままにすると、端末の紛失がそのまま漏えいになります。