鍼灸院・接骨院

広告できない鍼灸院が、それでもお客様に情報を届ける方法

公開日: 2026-07-20

前回の記事「鍼灸院・接骨院は『技能・実績』を広告できない」で解説したとおり、はり師・きゅう師の広告は限定列挙された事項に限られ、技能・施術方法・経歴には触れられません。とはいえ、お客様が施術所を選ぶための情報がまったく発信できないわけではありません。この記事では、広告規制の対象にならない情報発信の手段を整理します。

そもそも「広告」に該当しないもの

厚生労働省のガイドラインは、次のようなものは通常「広告」に該当しないとしています。

学術論文、学術発表等/新聞や雑誌等の記事/利用者等が自ら掲載する体験談、手記等/施術所内で掲示又は配付するパンフレット等/利用者からの申出に応じて送付するパンフレットやE-mail等

出典: 厚生労働省 あはき・柔整広告ガイドラインの概要(2026-07-20取得)

これらは、「利用者を誘引する意図」「氏名・施術所名の特定性」「一般人が認知できる状態」という広告の3要件のいずれかを欠く、あるいは性質が異なるものとして扱われています。

施術所内の掲示・配付資料を活用する

来店したお客様、あるいは来店を検討して問い合わせをしてきたお客様に向けた情報提供は、広告規制の枠外で行いやすい手段です。

  • 施術所内に、対応できる症状や施術の流れを説明するパンフレットを掲示・配付する
  • 問い合わせをしてきた方に、資料をメールで送付する(利用者からの申出に応じる形であることが前提)

ただし、こうした資料であっても、内容が技能・施術方法・経歴に関する誇張表現になっていないかは、通常の広告と同じ注意が必要です。ガイドラインは「実質的に広告と判断されるもの」についても触れており、形式だけを変えても内容が誘引的であれば広告として扱われる可能性があります。

利用者が自ら書いた体験談をパンフレットや院内掲示に転載する場合、実名や顔写真を添えるのであれば、あはき法とは別に本人への配慮も必要です。

一般的に、本人を判別可能な写真の画像は個人情報には該当しますが、個人データ(個人情報データベース等を構成する個人情報)ではないと解されるため、あらかじめ本人の同意を得ずに展示等を行っても、法第27条第1項に違反するおそれはないと解されますが、利用目的を通知又は公表することは必要です(法第21条第1項)。なお、プライバシーの権利や肖像権の侵害に当たる場合もあるため、例えば展示期間を限定したり、不特定多数の者への提供に際しては自主的に本人の同意を得る等の取組が望ましいと考えられます。

出典: 個人情報保護委員会 会社の行事で撮影された写真などを、当社内で展示する場合、写真に写っている本人からあらかじめ同意を得る必要がありますか。(2026-07-22取得)

広告可能な事項は分かりやすく言い換えてよい

ガイドラインは、広告可能とされた事項について、利用者の理解を助けるための分かりやすい言い換えを認めています。

医療保険療養費支給申請ができる旨 → 「医療保険により利用者は施術費用の一部負担で施術を受けることができます」又は「一旦施術費用の全額を負担いただきますが、後で保険者に対してその費用の一部を請求することができます」と言い換えることは可能

出典: 同上(2026-07-20取得)

この例からも分かるとおり、**規制の対象は「何を伝えるか」ではなく「どこまで踏み込んで伝えるか」**です。療養費の仕組みそのものを分かりやすく説明することは問題なく、前回記事で解説した療養費の条件(対象疾患・医師の同意書・償還払い)を正確に案内することは、この枠内で十分に実現できます。

インターネット上のウェブサイトの扱い

ガイドラインは、インターネット上のウェブサイト等は原則としてあはき師法・柔整師法の広告規制の対象とはならないとしつつ、内容の適切なあり方について自主的な取り組みを促すとしています。予約ページやウェブサイトであっても、技能・実績を誇張しない誠実な情報発信を心がけることが望ましいといえます。

まとめ

広告規制は「情報を出せない」ことを意味するのではなく、「誘引的な誇張表現を避ける」ことを求めるものです。施術所内の資料、問い合わせへの丁寧な回答、療養費の仕組みの分かりやすい説明といった手段を組み合わせることで、規制の範囲内でもお客様に必要な情報を届けられます。