鍼灸院・接骨院

鍼灸院の保険施術と自費施術、メニューと予約をどう分けるか

公開日: 2026-07-20

鍼灸院では、療養費(保険)の対象になる施術と、対象外の自費施術の両方を扱います。別記事「鍼灸の保険(療養費)は接骨院と別制度」で解説したとおり、保険が使えるのは医師の同意書がある慢性疼痛の6疾患に限られるため、それ以外のニーズには自費メニューで応える必要があります。この記事では、両者を両立させるメニュー・予約設計の考え方を解説します。

保険施術と自費施術は前提が異なる

保険施術は、医師の同意書にもとづく決められた症状への施術であり、内容や頻度も療養費のルールに沿って行う必要があります。一方、自費施術は施術所が自由にメニュー・料金を設定できます。この前提の違いを、お客様にも分かりやすく示しておくことが重要です。

  • 保険施術: 医師の同意書がある6疾患が対象。同意書の有効期間(6か月)内での継続が前提
  • 自費施術: 同意書の対象外の症状、予防・美容目的の鍼灸など、自由に設計できる

メニュー表での分かりやすい区分

予約ページやメニュー表では、保険施術と自費施術を明確に分けて表示することが、お客様の誤解を防ぎます。

  • 「保険施術(医師の同意書が必要です)」と「自費メニュー」を別セクションにする
  • 自費メニューには、療養費のルールに縛られない独自の施術(美容鍼、スポーツ鍼灸など)を設計する
  • 医師の同意書をまだ持っていない方向けに、「まずは自費でお試しいただけます」という案内を用意する

予約導線での注意点

保険施術は同意書の有無で受けられるかどうかが決まるため、オンライン予約の段階で「医師の同意書をお持ちですか」を確認できる導線があると、当日の行き違いを防げます。同意書をまだ取得していない新規のお客様には、自費メニューへの案内、または医師の同意書を取得する流れの説明を用意しておくとよいでしょう。

全国健康保険協会(協会けんぽ)は、保険給付の対象になる条件を次のように明示しています。

医師による適当な治療手段がなく(医療機関において治療を行い、その結果、治療の効果が現れなかった場合等)、はり・きゅうの施術を受けることを認める医師の同意がある場合です。初回申請時には、医師の同意書を添付してください。

出典: 全国健康保険協会 はり・きゅう等のかかり方(2026-07-22取得)

さらに、健康保険を使って継続するには「6ヶ月ごとに文書による同意」が必要とされています。同意書の有効期限が切れたまま保険施術を続けてしまうと、後から保険適用外と判定されるリスクがあるため、予約システム上で同意書の有効期限を患者ごとに管理しておくことが実務上重要です。

同意書・傷病名の管理にも監督責任がある

同意書には、患者の氏名だけでなく傷病名が記載されています。これは通常の連絡先情報より機微な個人データであり、事業者には従業者の取り扱いを監督する義務があります。

個人情報取扱事業者は、その従業者に個人データを取り扱わせるに当たっては、当該個人データの安全管理が図られるよう、当該従業者に対する必要かつ適切な監督を行わなければならない。

出典: e-Gov法令検索 個人情報の保護に関する法律第24条(2026-07-22取得)

受付スタッフが予約管理のために同意書の有効期限を確認する場合でも、傷病名そのものの閲覧は施術者に限定するなど、業務上必要な範囲にアクセスを絞っておくことが、この監督義務を実務に落とし込む具体的な方法です。

自費メニューは広告規制の外側でどう伝えるか

自費メニューの内容(美容鍼、スポーツ鍼灸など)自体は、あはき師法上「業務の種類」として広告可能な範囲に収まりますが、その効果や技能を強調する表現は、別記事「鍼灸院・接骨院は『技能・実績』を広告できない」で解説した規制の対象になります。メニュー名と料金・所要時間を明確に示すにとどめ、効果を断定する表現は避けることが安全です。

まとめ

保険施術と自費施術は、対象となる条件も設計の自由度もまったく異なります。両者をメニュー表・予約導線で明確に区分し、お客様が自分がどちらに該当するかを迷わず判断できるようにしておくことが、円滑な運営につながります。