鍼灸院・接骨院

鍼灸接骨院の開業費用——事業所の費用より前に、国家資格の取得という投資がある

公開日: 2026-07-22(更新日: 2026-07-26

これまで解説してきたネイル・まつエク・アイブロウ・脱毛・エステ・整体・リラクゼーションは、いずれも資格が不要か、開業直前に取得できる範囲の資格でした。鍼灸接骨院はこの点が根本的に異なります。はり師・きゅう師・柔道整復師のいずれかの国家資格が開業に必須であり、事業所の設備投資が発生するより前に、資格取得という数年単位の投資が必要という、他業種にはない費用構造を持っています。

資格取得は養成施設で3年以上——事業所の費用より先に発生する投資

柔道整復師の国家資格を取得するには、指定された養成施設で一定期間学ぶ必要があります。文部科学省・厚生労働省が定める指定規則は、修業年限を次のように定めています。

修業年限は、三年以上であること。

出典: 厚生労働省 柔道整復師学校養成施設指定規則(2026-07-22取得)

はり師・きゅう師についても、同様に専門の養成施設での修業が必要です。養成施設ごとの学費は学校によって異なるため、開業を検討する段階でこの記事だけで金額を判断せず、候補となる養成施設に個別に確認することが確実です。重要なのは、この期間・費用が、事業所を開業するための設備資金・運転資金とは別に、開業前の準備段階で発生するという点です。

事業所の開業費用は300万円〜800万円が目安

資格取得後の事業所開設については、日本政策金融公庫がはり師・きゅう師・柔道整復師の施術所に特化した創業ポイントを公開しています。

はり師・きゅう師・柔道整復師の施術所の開業には、立地や店舗の広さなどによりますが、300万円~800万円ほどかかります。

出典: 日本政策金融公庫 はり師・きゅう師・柔道整復師の施術所の創業ポイント(2026-07-22取得)

内訳は次のように示されています。

①設備資金 物件取得費(敷金・保証金など)、内装工事、施術用ベッド・機器等、什器備品 ②運転資金(軌道に乗るまでの経費等) 賃借料、水道光熱費、消耗品費、広告宣伝費

出典: 同上(2026-07-22取得)

この300万〜800万円という水準は、資格取得後の事業所開設に限った金額であり、養成施設での学費・生活費は含まれていません。開業計画を立てる際は、この2つの投資を分けて考える必要があります。

保健所への開設届も必要

事業所の開設にあたっては、保健所への届出も必要です。

「はり師・きゅう師・柔道整復師の施術所」を開業するには、施設開設後10日以内に管轄の保健所に「開設届」を提出します。

出典: 日本政策金融公庫 はり師・きゅう師・柔道整復師の施術所の創業ポイント(2026-07-22取得)

美容所・理容所とは異なる「施術所」という区分ですが、施設の届出が必要な点はまつエク・アイブロウと共通しています。届出書類には施術者の免許証の写し・平面図(施術室や消毒設備の配置等)が必要になるため、内装工事の段階でこれらの要件を満たしておく必要があります。

保険請求(受領委任)を扱うには、資格取得後の実務経験と研修受講が要件になる

別記事で解説したとおり、はり・きゅうの施術は医師の同意書がある場合に療養費(保険)の対象になります。ただし、療養費の請求を管理する「施術管理者」になるには、資格を取得しただけでは足りません。厚生労働省は、柔道整復師について次の要件を通知しています。

平成30年4月から「施術管理者」になるための要件として新たに、資格取得後の「実務経験」と「研修の受講」を加えることとなります。(中略)令和6年4月以降に届出する場合 3年間の実務経験(中略)研修の時間 16時間以上 2日間程度

出典: 厚生労働省 施術管理者の要件について(周知のご依頼)(2026-07-26取得)

はり師・きゅう師についても、同様に実務経験と研修が要件化されています。あん摩マッサージ指圧師を含む3資格それぞれについて、要件が資格ごとに区分される点が特徴です。

施術管理者の要件に、実務に従事した経験(以下「実務経験」という。)を追加する。なお、実務経験は、はり師、きゅう師又はあん摩マッサージ指圧師としての実務経験をそれぞれ区分する。(中略)施術者の資格取得後の期間とし、はり、きゅう又はあん摩マッサージ指圧でそれぞれ1年間必要となる。

出典: 厚生労働省 はり師、きゅう師及びあん摩マッサージ指圧師の施術に係る療養費の受領委任を取り扱う施術管理者の要件について(保発0304第1号)(2026-07-26取得)

つまり、はり・きゅうの保険施術を扱いたい場合は資格取得後それぞれ1年間、柔道整復師の保険施術(療養費)を扱いたい場合は資格取得後3年間の実務経験を積んだうえで、指定の研修を修了しないと、施術管理者として受領委任の届出ができません。この期間は事業所の開業準備とは別に、資格取得後さらに必要になる期間であり、開業スケジュールを組む際は「資格取得→実務経験→施術管理者研修→開業」という順序を前提に逆算する必要があります。保険施術を扱わず自費施術のみで開業する場合はこの要件の対象外ですが、その場合の保険施術と自費施術の切り分けについては別記事を参照してください。

開業初期こそ、固定費を増やさない選択を

資格取得という長期の投資に加えて事業所の開業費用も必要になる分、開業後の月々の固定費はできるだけ抑えておきたいところです。予約管理を紙の予約帳や電話対応だけに頼ると、施術中に電話に出られず機会損失につながったり、後から有料の予約システムへ乗り換える手間が発生したりします。

開業時点から無料で使える予約システムを導入しておけば、次の点で開業初期の運転資金を圧迫しません。

  • 初期費用・月額費用をかけずに、24時間ネット予約を受けられる
  • 保険施術・自費施術のメニューを分けて管理できる仕組みを、追加費用なく整えられる
  • サロン検索サイトの掲載費用(月数万円〜)とは別に、自社の予約導線を持てる

開業前にどの程度の集客・売上を見込めるかを試算しておきたい場合は、損益分岐シミュレーターで家賃・人件費・広告費を入力して確認できます。

まとめ

鍼灸接骨院の開業費用は、事業所の開設に300万円〜800万円が目安になる一方、その前提として国家資格の取得(養成施設で3年以上の修業)という他業種にはない投資が必要です。日本政策金融公庫が示す業種特化の資金計画を参考にしつつ、資格取得と事業所開設という2段階の投資を分けて計画することが、実態に近い準備につながります。開業初期の固定費を増やさない選択として、無料から始められる予約システムも検討してみてください。料金プランはこちらからご確認いただけます。