「エステサロン リピート率 平均」で数字を探しても、自店と比べられる形では出てきません。
理由は2つあります。リピート率に統一された定義がないこと、そしてエステ固有の事情として、都度払いとコース契約で「2回目の来店」の意味がまったく違うことです。
この記事は、平均値を探す代わりに、自店の数字を定義から決めて出す手順を書きます。
この記事でわかること
- 業界平均が公表されていない理由と、エステ固有の事情
- コース契約と都度払いを分けて測る必要がある理由
- コース契約のサロンが追うべき2つの指標(消化率とコース後の継続率)
- 自店の数字を出す計算手順
- 上げるための打ち手
エステのリピート率が1つの数字にまとまらない理由
コース契約の2回目来店は、自由意思での再来ではありません。すでに支払った回数を消化しているだけです。
これを都度払いの2回目来店と同じ「リピート」として数えると、次のことが起きます。
- コース契約を売った月だけ、翌月以降のリピート率が跳ね上がる
- コースが終わった時点で数字が急落する
- 施策を打っても、契約の販売状況に埋もれて効果が見えない
つまり、混ぜた数字は施策の評価に使えません。
何を測るかを、契約形態ごとに決める
| 契約形態 | 測る指標 | 何が分かるか |
|---|---|---|
| 都度払い | 新規リピート率 | 初回で終わったか、2回目が来たか |
| コース契約 | 消化率 | 期間内に消化できているか(苦情・中途解約の予防) |
| コース契約 | コース後の継続率 | 契約が切れたあとも残るか(売上の継続性) |
コース契約が売上の柱なら、追うべきは下2つです。リピート率という言葉に引きずられて都度払いの計算式を当てはめても、意味のある数字は出ません。
都度払い: 新規リピート率の計算
計算式
新規リピート率 = 期間内の新規客のうち、観測期間内に2回目が来た人数 ÷ 期間内の新規客数
観測期間の決め方
自店の推奨サイクルより少し長く取ります。
| メニュー | 推奨サイクルの目安 | 観測期間の目安 |
|---|---|---|
| フェイシャル | 3〜4週間 | 90日 |
| ボディ・痩身 | 1〜2週間 | 60日 |
| 総合(混在) | ― | 90日 |
一度決めたら変えないでください。期間を変えながら比べると、施策の効果と定義の変更が混ざって判断できなくなります。
計算例
4月の新規(コース契約者を除く)が12名、うち7月12日までに2回目が来たのが5名だった場合。
5 ÷ 12 = 約42%
この42%に他店との比較の意味はありません。意味があるのは翌月・翌々月の同じ計算式で出した数字との比較です。
コース契約: 消化率
計算式
消化率 = 期間内に消化された回数 ÷ その期間に消化されるべき回数
「消化されるべき回数」は、契約時に想定したペース(週1回・全10回なら10週で10回)から出します。
なぜ追うのか
消化が遅れると、中途解約と苦情の原因になります。
コース契約が特定商取引法の特定継続的役務提供に当たる場合、事業者は中途解約に応じ、精算する義務があります(同法第49条)。また契約書面には「役務の提供期間」を記載しなければなりません(同法第42条第2項第4号)。出典: e-Gov法令検索・特定商取引に関する法律(2026-08-07取得)。
期間の終期が来ているのに回数が残っている状態は、そのまま解約の申し出につながります。対象条件と書面交付義務はエステサロンが負う特定継続的役務提供の義務にまとめています。
追い方
月次で次の2つを出してください。
- 進行中の契約のうち、想定ペースより遅れている件数
- 期間の終期まで残り1か月を切っていて、回数が残っている件数
2は最優先で連絡する対象です。この抽出ができないと、解約の申し出を受けてから初めて気づくことになります。
コース契約: コース後の継続率
計算式
コース後継続率 = コース終了後90日以内に次の契約または都度施術で来た人数 ÷ その期間にコースを終えた人数
エステの売上の継続性を決めるのはこの数字です。コースを売り切っても、終わるたびに顧客がゼロに戻るなら、常に新規契約を取り続けなければなりません。
いつ声をかけるか
コースが終わってからでは遅いというのが要点です。残り2〜3回の時点で、次の提案を含めた話をしておきます。
- 残り2回の来店時に、施術後の状態と今後の見通しを伝える
- 最終回の来店時に、次の選択肢(新しいコース/都度払いでの維持)を提示する
- 最終回から2週間後を目安に、状態の確認を兼ねて連絡する
コースの段階設計そのものはエステのコース定着戦略で扱っています。
上げるための打ち手
効く順に並べます。
1. 施術直後にその場で次回予約を取る
都度払いもコース契約も、これが最も直接的です。
- コース契約 — 次の消化日をその場で決める。ペースが崩れる最大の原因は「次の予約が入っていないこと」です
- 都度払い — 推奨サイクルを伝えたうえで日付を提案する
日付が決まらない場合も、その場で予約ページをブックマークしてもらうところまでやってください。会計時に口頭で伝えてQRコードを読み取ってもらうと、実際にブックマークまで到達します。
2. 消化が遅れている人に連絡する
前述の抽出(想定ペースより遅れている/終期が近いのに回数が残っている)を月次で行い、連絡します。売り込みではなく、期間内に受け切ってもらうための連絡です。
3. 初回で終わった人の原因を絞る
都度払いの数字が低いなら、初回の体験に原因があります。エステ固有の確認点です。
- 施術後の変化と、それが続く期間を説明したか — 説明が無いと、次に来る理由が伝わりません
- 推奨サイクルを具体的に伝えたか — 「3週間後が目安です」と言うかどうかで次回予約の会話が変わります
- 体験価格から通常価格への差が大きすぎないか — 体験で来た人が通常価格で戻るかは別の話です
- コースの案内が強すぎなかったか — 初回で契約を迫られたと感じると、2回目が来ません
4はエステ固有です。コース契約が売上の柱である以上、初回で案内すること自体は自然ですが、断った人が二度と来ない状態になっていないかは確認する価値があります。
4. 記録を次回に活かす
前回の施術内容・使用した機器や化粧品・肌や体の状態・お客様の反応が残っていれば、2回目の体験が変わります。
なお、カウンセリングシートに既往歴や服薬を記録している場合、それは要配慮個人情報に当たりえます。取扱いはエステサロンの顧客管理を無料でやる方法で条文ごとに整理しています。
記録フォーマット
集計が続かない原因は、毎月どこかが変わることです。表計算1枚で固定してください。
シート1: 定義(最初に書いて、以後変えない)
| 項目 | 決めた内容の例 |
|---|---|
| 対象 | 都度払いの新規客のみ(コース契約者は別集計) |
| 観測期間 | 90日 |
| 判定 | 来店ベース(予約が入っただけでは数えない) |
| 除外 | スタッフの家族・関係者 |
シート2: 月次の記録
| 対象月 | 都度払い新規 | 90日以内に2回目 | 新規リピート率 | 進行中コースの遅延件数 | メモ |
|---|---|---|---|---|---|
| 2026-04 | 12 | 5 | 41.7% | 3 | |
| 2026-05 | 14 | 7 | 50.0% | 1 | 施術直後の次回予約を開始 |
メモ欄に施策を書くのが要点です。数字が動いたとき、何をした月かが分からないと因果を追えません。
判定できるまでの時間
観測期間が90日なら、4月の新規について判定できるのは7月です。施策を4月に始めても結果は3か月後に出ます。最低でも観測期間+2か月は続けてから判断してください。
数字を良く見せる操作をしない
- コース契約の消化を都度払いのリピートに混ぜる — 契約を売った月だけ数字が上がります
- 観測期間を途中で延ばす — 改善したのは定義であって店ではありません
- 予約が入っただけで数える — 来店ベースで数えてください
抽出できる状態が前提
打ち手の1と2は、いずれも抽出ができることが前提です。
- 想定ペースより遅れている契約
- 終期が近いのに回数が残っている契約
- 前回から◯日経過して次回予約が入っていない顧客
残回数の管理をどこでやるかを先に決めてください。回数管理を持たない予約システムを使うなら、予約1件と消化1回を突き合わせられる形が要ります。予約システム側の要件はエステサロンの予約システムの選び方にまとめています。
まとめ
- リピート率の業界平均は公表されていない。エステは都度払いとコース契約で来店の意味が違い、1つの数字にまとまらない
- 都度払いは新規リピート率、コース契約は消化率とコース後の継続率を測る
- 混ぜると、契約を売った月だけ数字が上がって見える
- 消化の遅れは中途解約と苦情の原因。特定継続的役務提供に当たる場合、中途解約への対応義務がある(特商法第49条)
- 打ち手は、施術直後の次回予約 → 消化遅れへの連絡 → 初回離脱の原因特定 → 記録の活用の順
- コース後の声かけは終わってからでは遅い。残り2〜3回の時点で始める
料金と機能の範囲は料金プランに掲載しています。