「医療用ではない、エステ向けの脱毛機器を使っているから問題ない」という理解で機器を選んでいないでしょうか。この基準は正確ではありません。厚生労働省の通知が定める線引きは、機器の種類ではなく、施術が何をするかにあります。
医師法第17条が定める線引き
厚生労働省は平成13年、都道府県あてに次の通知を発出しています。
用いる機器が医療用であるか否かを問わず、レーザー光線又はその他の強力なエネルギーを有する光線を毛根部分に照射し、毛乳頭、皮脂腺開口部等を破壊する行為 (医師が行うのでなければ保健衛生上危害の生ずるおそれのある行為であり、医師免許を有しない者が業として行えば医師法第十七条に違反すること)
出典: 厚生労働省 医師免許を有しない者による脱毛行為等の取扱いについて(医政医発第105号)(2026-07-20取得)
ここで示されているのは、「用いる機器が医療用であるか否かを問わず」という点です。エステサロン向けに販売されている脱毛機器であっても、その光が毛根(毛乳頭)を破壊するほどの強さであれば、施術内容そのものが医師法の対象になります。機器の販売元が「エステ向け」と説明していることは、法的な安全性を保証するものではありません。
エステで行える施術の範囲
国民生活センターは、医療機関とエステの違いを次のように整理しています。
医療機関では、レーザー等により毛の発生源を破壊する等、高い効果が得られる脱毛を受けることができます。(中略)一方、エステでは、光を照射すること等による一時的な除毛・減毛など、医行為に該当しない範囲の施術しか行うことができません。
出典: 国民生活センター なくならない脱毛施術による危害(2026-07-20取得)
つまり、エステで合法的に提供できるのは、毛根を破壊しない一時的な除毛・減毛の範囲にとどまります。導入を検討している機器が、この範囲に収まっているかどうかは、メーカーの説明を鵜呑みにせず、出力・作用機序を正確に理解したうえで判断する必要があります。
違反した場合の罰則は軽くない
医師法第17条違反は、行政指導で済む話ではありません。医師法自体が罰則を明記しています。
次の各号のいずれかに該当する者は、三年以下の拘禁刑若しくは百万円以下の罰金に処し、又はこれを併科する。一 第十七条の規定に違反した者
出典: e-Gov法令検索 医師法第31条(2026-07-22取得)
三年以下の拘禁刑・百万円以下の罰金という水準は、美容師法違反(30万円以下の罰金)と比べても重く、医師法違反がそれだけ重大な問題として扱われていることが分かります。「エステ向け」という機器メーカーの説明を鵜呑みにした結果であっても、施術内容が毛根破壊に当たれば、この罰則の対象になりえます。
導入前に確認すべきこと
- 機器メーカーに対し、毛根(毛乳頭)を破壊する出力になっていないかを具体的に確認する
- 「医療用ではない」という説明だけで安全性を判断しない
- 判断に迷う場合は、保健所や弁護士など専門家に相談する
- 導入実績や販売許可の有無だけでなく、出力・照射方式についてメーカーから書面で説明を受け、記録として残しておく
まとめ
医療脱毛とエステ脱毛を分けるのは、機器が医療用かどうかではなく、毛根を破壊するかどうかという施術内容そのものです。この線引きを正確に理解しないまま機器を導入すると、意図せず医師法違反のリスクを抱えることになります。広告表現における注意点は、次回の記事で解説します。