「40万円支払えば永久に脱毛が受けられる」と説明され契約したが、1回施術を受けて解約を申し出たところ、10万円の解約料を請求された。
これは、国民生活センターに実際に寄せられた相談です。「通い放題」「期間・回数無制限」といった長期契約のコースは、中途解約時にトラブルへつながりやすい構造を持っています。この記事では、その構造的な原因と、トラブルを防ぐ契約設計を解説します。
脱毛エステの相談は年間2,000〜5,000件
国民生活センターの発表によると、脱毛エステに関する相談件数は次のように推移しています。
年度別相談件数:2016年度は2,851件、2017年度は4,916件、2018年度は2,893件、2019年度は2,885件、2020年度は2,859件、2021年度は11月30日までで2,004件です。相談件数のうち解約が関わる割合:2016年度は61.0%、(中略)2021年度は11月30日までで50.9%です。
出典: 国民生活センター 脱毛エステの通い放題コースなどでの中途解約・精算トラブルに注意!(2026-07-20取得)
相談の半数前後が解約に関わるものであり、契約設計そのものがトラブルの火種になっていることがうかがえます。
トラブルの構造: 「有償部分」と「無償部分」のギャップ
国民生活センターは、トラブルの構造を次のように説明しています。
長期間にわたって施術を受けられるコースなどは多くの場合、契約上、「有償で施術を受けられる期間・回数」と「無償で施術を受けられる期間・回数」とに分かれている。(中略)脱毛エステの中途解約では「すでに提供されたサービスの対価」が請求されるが、精算の対象となるのは有償の期間・回数であり、原則、無償部分には発生しない。
出典: 同上(2026-07-20取得)
「通い放題」と説明された期間全体のうち、実際に精算対象となる「有償部分」がごく一部しかない契約になっている場合、お客様が想定していたよりも解約料が高額になり、トラブルに発展します。冒頭の相談事例も、契約書には「施術は5回までが有償、6回目以降は無償」と書かれていたにもかかわらず、口頭説明ではその構造が十分に伝わっていなかったケースです。
自店の契約設計を見直す
「通い放題」「◯年間脱毛し放題」といった訴求力の高い言葉を使う場合、実際の契約条件(有償・無償の境目、中途解約時の精算ルール)が、その言葉から想像される内容と乖離していないかを見直すことが重要です。
- 有償の期間・回数と、無償の期間・回数を契約書に明記する
- 「通い放題」等の広告表現と、実際の有償範囲にギャップがないかを確認する
- 中途解約時の精算ルール(1回あたりの単価、違約金の有無)を事前に明示する
- 都度払いのコースも選択肢として用意し、長期契約に不安のあるお客様に案内する
予約管理と契約管理を連動させる
有償・無償の境目が複雑な契約ほど、お客様自身が「あと何回分が有償か」を把握しづらくなります。予約システム上で、残り回数や消化状況をお客様自身が確認できるようにしておくことは、契約内容の透明性を高め、解約時の認識のズレを未然に防ぐ効果があります。毛周期に合わせた次回予約の間隔管理とあわせて設計すると、消化状況の可視化がより実務に落とし込みやすくなります。
中途解約時に請求できる金額にも法律上の上限がある
「有償部分」と「無償部分」の説明を尽くしても、そもそも解約時に請求できる金額には法律上の上限があります。脱毛のような長期コースは、特定商取引法上の特定継続的役務提供に該当し、次のルールが適用されます。
消費者は、クーリング・オフ期間の経過後においても、将来に向かって特定継続的役務提供等契約(関連商品の販売契約を含む)を解除(中途解約)することができます。
出典: 消費者庁 特定商取引法ガイド 特定継続的役務提供(2026-07-22取得)
つまり、契約書に「解約不可」「一切返金しません」と書いてあっても、消費者はいつでも中途解約を申し出ることができ、事業者が請求できる金額にも上限があります。冒頭の相談事例のように「10万円の解約料」が法定上限を超えていれば、その部分は法律上無効になる可能性があります。
まとめ
脱毛エステの中途解約トラブルは、「通い放題」という言葉と実際の有償範囲のギャップから生まれることが、国民生活センターの相談事例から分かります。契約書での明記と、予約システム上での消化状況の可視化を組み合わせること、そして特定商取引法が定める解約権・上限額を正しく理解しておくことが、トラブル防止の実務的な対策になります。